だから、生きて。 (ページ23)

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「じゃあね、おばあちゃん。アイス美味しかった」

翔馬がおばあちゃんに手を振っている間に足をペダルに乗せた。やっぱり重いけど、漕げなくはない。

〔ねえ、ちょっと待って〕

やばい、と思いつつ何も行動を起こせない。
学校に連絡されるかも、って考えれば考えるほど冷や汗が出る。
でも絶対に連絡されたくない。

「何、おばあちゃん」

〔あなたたち、泊まるところがないって話してなかった？〕

「うん、寝るところ今から探しに行くの」

翔馬が何言い出すか分からない。

『あ、あの、心配しなくて大丈夫です。親にはちゃんと行ってきましたし、』

もちろん嘘。
どう考えてもこの格好で行くわけない。

〔そう。〕

この後何返されるか分からないけど、お願いだから最悪のパターンだけは避けてほしい。

『そういうわけなんで、私たちもう行きますね』

〔ねえ、泊まるところ自分たちで探すって言ってたわね〕

ペダルを踏もうとした足をまたおばあちゃんに止められる。
そしておばあちゃんは自分のお店を指さした。

〔泊まるところならここにあるよ。このお店の奥は私の家になっているの。良ければ家に泊まっていきなさい〕

唖然とした。今、おばあちゃんなんて言った？泊まっていい？

〔今は子供もみんな成人しちゃってひとり暮らしなのよ。古い家だけど、お部屋も余っているし、外で寝るよりもいいでしょう〕

「おばあちゃんいいの？？Aそうしよう」

『いや、ちょっと待って』

「良かったねA。寝るところ探す手間省けたね」

『いやだからちょっと待って』

おばあちゃんが善意で言ってくれたのはわかる。だからといって会ったばかりの見ず知らずの人の家に泊めてもらうのは気が引ける。まあ、会ったばかりの人とこんな無謀な旅をしてる私が言えたことでは無いが。

ましてや自分たちで勝手にやっていることなのに他人の手を借りて迷惑をかけるなんて。

『ありがとうございます。でも、大丈夫です。自分たちで何とかしますから』

これからどうなるかなんて全く分からないけど、2人だし、1日野宿するくらい大丈夫な気がする。体はヘトヘトで重い足枷がついているのではないかって思うくらいだけど、少しは休めたし。

『だからほら、翔馬行こ』

「いいの、本当に」

『うん。何、そんなに野宿したくないの？』

「いやだって、A結構疲れてるでしょ」

『私は大丈夫』

本当は大丈夫なんかじゃないけど他にどんな言い方をすればいいのか。