だから、生きて。 (ページ17)

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山間をぬけて、所々に民家が立ち並んでいた。

だがコンビニどころか自販機すら見つからない。

私たちはオレンジ色に染まる道を相変わらず地道に進んだ。

『お腹空いた....』

もう何時間も何も食べていない。何も補うことなくただただ体力が失われていく。

なんでもいいから何か食べたい。この際嫌いなキノコですら飛びついて食べれそうな気がする。

「たしかにお腹空いたかもなあ」

後ろから私への返事なのか、間延びした声が聞こえてきた。

私の空腹感はそんなあやふやなものでは無い。空いたかもで誤魔化せるものでは無いのだ。

しかも水分すら取れていない。お陰様で喉が砂漠のようだ。

近くに湧き水でも無いだろうか。

「あ、あれ」

何も補うことができなくて意識が朦朧とするなかでひたすら自転車を漕いでいると、翔馬が不意に声を上げた。

『どうしたの』

「ほら、あれ」

翔馬が指を指した先には小さなお店がぽつんと佇んでいた。コンビニみたいなものではなく、昔ながらの小さな商店。私はそれだけでも十分だった。何しろお店の前にはずっと探していた自販機が置いてあった。

『翔馬、休んでいこう』

「うん、そうだね。A、死にそうだし」

『それはわかってるのに手伝わないんだ』

「いや、お店見つけてあげたじゃん」

お店の前で自転車を止める。

そこは、木造2階建ての民家で1階で駄菓子屋さんをやっている、少し懐かしい気持ちがするところだった。

お店の中にはお菓子やアイスが並んでいて、建物と同じような木で作られたベンチがお店の前に置かれていた。

自販機でお水を買って、そのベンチに腰かけた。

ペットボトルの水を半分くらい一気飲みして、深呼吸をするとどっと疲れを感じた。

出来ればもうここから動きたくない、1歩も。本気でそう思った。

汗ばんだ前髪を掻きあげると、そこには夕日が沈みかけていた。

ここから野宿する所を見つけなくてはいけない。

「翔馬」

呼んでみたけれど返事がない。聞こえていなかったのかな、とか思ってもう一度呼んでみる。

「ん、呼んだ？」

お店の中からひょっこりと顔を出した翔馬

『うん、翔馬も飲みなよ、お水。全然飲んでないでしょ』

水が半分残ったペットボトルを差し出した。

本当は最後の一滴まで飲み干したいところだが、翔馬の水分のとらなさが心配になった。

「ん、俺はいいよ」

『いや、でも汗かいたでしょ？少しは飲みな？』

それでも翔馬はお水を飲もうとしなかった。