だから、生きて。 (ページ12)

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『え、ちょ、大丈夫だよ。だったら2人で歩こう？その方が楽でしょ？』

「いいから、俺自転車乗れないから運転代われないけど、このくらいならできるよ？」

『大変だよ、走るとか。』

「今のAの方が大変そうだよ。」

確かにそうだ。正直いつ倒れてもおかしくないレベルに体力がゼロに近づいている。

「今まで俺のこと載せてくれてたでしょ。1人なら結構軽くなるし、それで俺が押していけば、山のてっぺんまで行けるよ。」

翔馬が、さあ行こう、と自転車を押す力を込める。

私は何も言えなくて、黙ったままさっきよりも軽くなったペダルを踏んだ。

「A、頑張れ。」

『うん、頑張ってるよ。翔馬も頑張れ。』

お互いを励ましあいながら夏の山の空気を胸いっぱいに吸い込んで吐く。

もう何が何だか分からないほどにかいた汗。

なんで私こんなことしてるんだろう。今日死のうとしていた人がすることじゃない。

そう考えていると、真っ青な空が見えてきた。

『翔馬、見えた！』

もう力が入らないほど、自転車のハンドルに項垂れる。息が苦しい、心臓や肺が一生懸命機能しようと動いているのがわかる。

『翔馬、頂上だよ。』

と言いつつ振り返ると、そこに翔馬はいなかった。でも微かに足音が聞こえる。

『しょ、うま？』

「はあ、やっと、ついた」

翔馬は、半ば倒れる形で荷台に凭れるようにして手を着いた。

『いつから離れてたのよ』

「途中、まで」

『私も頑張ったんだから、最後までちゃんと着いてきてよ』

「いや、ごめん」

正直腹が立った。自分でやるって言い出したのに。なんで私ばっかり頑張ってんのよ。

でもそんな腹立たしい感情もすっと消えた。

『翔馬？』

翔馬の様子が変だ。