検索窓
今日:74 hit、昨日:97 hit、合計:644,918 hit

. ページ12

.



________________
_____________
________



中学生のとき。
確かその日は委員会があって、帰りが遅くなったんだっけ。学校が終わって家に帰ると、いつもとは違う光景が広がっていた。


顔も身体も血塗れで床に倒れている父と、包丁を持ったまま座り込んで唖然としている母。
何が起こったかは容易に想像ができた。


私は父に近づいて、血塗れになった顔をその辺にあったタオルで拭った。目が開かれたまま、呼吸は止まっていて、死んでいると確認した。

血にも死体にも、私は思うほど驚かなかったと思う。
母はヒステリックな所があったし、いつかこうなるんじゃないかと考えたことはあった。



私が衝撃を受けたのは、もっと他のこと。



部屋に入ってきた私に気づいた母は、お前も殺してやると包丁を向けるでもなく、ごめんなさいと謝るでもなく。

私を一度見て、そして気まづそうに目を逸らした。
ただ、それだけだった。


『はっ………何それ、他人じゃん。』


母か自分か、誰に向けたのかも分からない乾いた笑いが零れた。

こんな状況になっても、母にとっての私はただの第一発見者でしかなかったんだから。



私は部屋を出て、電話をかけた。


もう死んでるときって、どこに電話したらいいんだろう。
警察?救急車?


多分そんなことを考えていたと思う。



もうどうでもよかった。
だって他人だから。
テレビで悲しいニュースを見たって、可哀想、痛そう、それだけでしょ。それと全く同じ。

父は死んだし、母は刑務所に入る。
だけど私はなんにも変わらない。


またアイツら、私をひとりにしていった。
涙なんて出るわけがなかった。




ひとりでも、私は頑張って勉強して、奨学金と保険金を使って大学に入り、大手の金融会社に就職した。
男の人に好かれやすい母似の顔と、父譲りの仕事の早さにだけは恩恵を受けたかな。


いま考えれば仕方なかったのかも。
だって、一緒にご飯を食べるのも、プレゼントをくれたのも、私を必要としてくれたのも、全部全部あの人たちだった。
それがたまたま、蘭さんたちだっただけ。ただそれだけ。



差し伸べられた手のあたたかさに目を瞑ったって
何も悪いことなんかないよね…?

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (691 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2862人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

full.(プロフ) - ゆきさん» うわあああ嬉しすぎます!(´TωT`)この作品を選んでくれてありがとうございます!更新も頑張ります! (2022年7月16日 10時) (レス) id: 73b8919793 (このIDを非表示/違反報告)
full.(プロフ) - 天然水さん» コメントありがとうございます! (2022年7月16日 10時) (レス) id: 73b8919793 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - とても素敵な作品をありがとうございます!面白くて一気に読んでしまいました!1番好きな作品です…♡作者様のペースで更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2022年7月15日 21時) (レス) @page49 id: cff8d00b59 (このIDを非表示/違反報告)
天然水 - 更新してください (2022年7月12日 19時) (レス) id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)
天然水 - 早く更新してほしいです (2022年7月4日 7時) (レス) id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:full. | 作者ホームページ:http://utanai.nosv.org/u.php/hptyomatu/  
作成日時:2022年4月15日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。