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中学生のとき。
確かその日は委員会があって、帰りが遅くなったんだっけ。学校が終わって家に帰ると、いつもとは違う光景が広がっていた。
顔も身体も血塗れで床に倒れている父と、包丁を持ったまま座り込んで唖然としている母。
何が起こったかは容易に想像ができた。
私は父に近づいて、血塗れになった顔をその辺にあったタオルで拭った。目が開かれたまま、呼吸は止まっていて、死んでいると確認した。
血にも死体にも、私は思うほど驚かなかったと思う。
母はヒステリックな所があったし、いつかこうなるんじゃないかと考えたことはあった。
私が衝撃を受けたのは、もっと他のこと。
部屋に入ってきた私に気づいた母は、お前も殺してやると包丁を向けるでもなく、ごめんなさいと謝るでもなく。
私を一度見て、そして気まづそうに目を逸らした。
ただ、それだけだった。
『はっ………何それ、他人じゃん。』
母か自分か、誰に向けたのかも分からない乾いた笑いが零れた。
こんな状況になっても、母にとっての私はただの第一発見者でしかなかったんだから。
私は部屋を出て、電話をかけた。
もう死んでるときって、どこに電話したらいいんだろう。
警察?救急車?
多分そんなことを考えていたと思う。
もうどうでもよかった。
だって他人だから。
テレビで悲しいニュースを見たって、可哀想、痛そう、それだけでしょ。それと全く同じ。
父は死んだし、母は刑務所に入る。
だけど私はなんにも変わらない。
またアイツら、私をひとりにしていった。
涙なんて出るわけがなかった。
ひとりでも、私は頑張って勉強して、奨学金と保険金を使って大学に入り、大手の金融会社に就職した。
男の人に好かれやすい母似の顔と、父譲りの仕事の早さにだけは恩恵を受けたかな。
いま考えれば仕方なかったのかも。
だって、一緒にご飯を食べるのも、プレゼントをくれたのも、私を必要としてくれたのも、全部全部あの人たちだった。
それがたまたま、蘭さんたちだっただけ。ただそれだけ。
差し伸べられた手のあたたかさに目を瞑ったって
何も悪いことなんかないよね…?
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full.(プロフ) - ゆきさん» うわあああ嬉しすぎます!(´TωT`)この作品を選んでくれてありがとうございます!更新も頑張ります! (2022年7月16日 10時) (レス) id: 73b8919793 (このIDを非表示/違反報告)
full.(プロフ) - 天然水さん» コメントありがとうございます! (2022年7月16日 10時) (レス) id: 73b8919793 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - とても素敵な作品をありがとうございます!面白くて一気に読んでしまいました!1番好きな作品です…♡作者様のペースで更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2022年7月15日 21時) (レス) @page49 id: cff8d00b59 (このIDを非表示/違反報告)
天然水 - 更新してください (2022年7月12日 19時) (レス) id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)
天然水 - 早く更新してほしいです (2022年7月4日 7時) (レス) id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:full. | 作者ホームページ:http://utanai.nosv.org/u.php/hptyomatu/
作成日時:2022年4月15日 0時