広い空の下で (ページ5)

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4話ページ5

「あんたもう行くのかい？」

「そうだ二ー。怪我もまだ治って二ーし」

どうやら私が考えていた事とは全然違ったらしい。
イル族以外の人に心配されているという事実にどうすればいいのか分からなくなった。

『いやでも、ここにいても迷惑かけるだけですし…』

ふいに島での出来事を思い出し、怖くなって無意識の内に手に力を入れ握っていた。

「……お前家は？」

『ありま、せん…』

今の私は何も持ってない。
その事実だけで、心臓がキュッとなった。

「掃除・洗濯・靴磨きに武器磨き…」

『……？』

「ショバ提供するかわりこの4つの仕事をしろ!! 一日に1回茶碗1杯の米!! コップ1杯の水!! これだけは保証してやる!!」

『えっと、つまり…
ここに住んでもいいと言うことですか？』

「そういう事だ二ー」

この人達はきっと優しい人達なんだろうなと思う。

だからこそ巻き込むわけにはいかない。
だって私に関われば、あいつらに殺される。

『凄く嬉しいんですけど、それは…』

「なんだい文句あんのかい。
あたし達はあんたの命の恩人だよ？」

『で、でも…』

「いいか嬢ちゃん。この世界は子供が一人で生きていける世界じゃないんだ。何があったのかは知らんが、ここはお頭の言う通りにしとけ。それがお前さんの為になる」

言い淀む私にしゃがんで手を握った男性。たしか名前はバンさんだったはず。

確かにその人の言った通りだと思った。
私一人で海に出てもきっと死ぬだけ。
それなら、選択肢は一つしかない。

『私は＂バケモノ＂ですけどそれでもいいと言って下さるのでしたら、よろしくお願いします』

「？…ああ」

不思議そうにしていたが対して気にすることもなく頷くダダンさん。

「じゃあ早く朝ごはん食べる二ー」

「嬢ちゃんもな。食べねーとまたぶっ倒れるぞ」

他の人も誰も拒みはしなかった。
文句の一つや二つ言いそうなエースさんすら何も言わない。

『…はい!! これからよろしくお願いします！』

それが嬉しかった私は一際大きな声で挨拶する。どっと笑いに包まれた。それに釣られていつの間にか私も一緒になって笑っていた。

この時の私は受け入れて貰えた嬉しさのあまり、エースさんがびっくりした様子で私をじっと見ていたことに気がつかなかった。