広い空の下で (ページ24)

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6話ページ24

だけど幼い私には意味がよく分からなくて聞き返した。

「少し難しい話だったかしらね。
でもね？ステラ、これだけは覚えておいて。

人を大切にするのはもちろん大事だけれど、

一番は自分がどうしたいか。
自分がどんな人になりたいか。なのよ」

そう言って茶目っ気たっぷりにウインクするお母さんに、思わず笑ってしまう。

「ステラはどんな人になりたい？」

『うーん……わかんない！』

本当は一つ思い浮かんでいたけれどなんとなく恥ずかしくて言わなかった。

「分かんないか〜!!!」

でもお母さんはそれすらもお見通しだったように思う。
それでも知らないフリをしてとある提案をしてくれた。

「だったらお父さんみたいに色んなところを見て、色んな人に出会って話をしたらいいかもしれないわね！
探してみるって凄く楽しいことよ」

＿＿＿＿＿

＿＿＿

『だからエースさんも探してみたらいいんじゃないですか？』

「は？なんでおれが」

『じゃあ競争にしましょう！
私とエースさん、どちらが早く見つけられるか』

「なんだその勝負、やるわけねェだろ」

『じゃあ私の勝ちってことで』

「はァ!!?おれがお前に負けるわけねェだろ!!!
やってやるよその勝負！」

なんで怒ってるかは分かんないけれど、本気で怒ってないんだろうなってことはわかった。

怖い人だと思ってたけど、案外そんなことないみたい。

「何笑ってんだよキモチワリィ。
さっさと行くぞ」

『あっ、ちょっと待ってくださいよ〜』

「それ、やめろ」

いつの間にか止まった足を前へ動かし始めたエースさんを追いかけるように走ると、また立ち止まってそう言った。

『え？』

意味がわからず首を傾げた私に、「その変な言葉遣いだよ！」と感情のままに声を張り上げる。

なんでも「気持ち悪い」らしい。
敬語を知らないのだろうか、とツッコミたくなる気持ちを抑えて代わりに私も声を張り上げる。

『分かった！！！
お・に・い・ちゃん！！！！！』

「ふざけんな！おい！」

『先に着いた方が勝ちだから〜！！！』

ムズムズする心のままに、空へと飛び上がる。
夕陽が沈み、橙の空の上には一際輝く星が浮かんでいた。