広い空の下で (ページ23)

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5話ページ23

「つまり……
おれとお前は、血の繋がりがあるって、こと……か？」

『それを確かめる術はもうないですけど、
でも、そうだと思います』

「……そうか」

『はい……』

そこから気まずい沈黙が流れる。
こうなるなら言わなければよかったと後悔した。

いやだってまさか、エースさんにそんなこと言われるなんて思ってなかったし……

とにかくこの空気をどうにかしなきゃと考えを巡らせる。
そんな時だった、

「お前はさ」
という声が聞こえてきたのは。

「お前は、産まれてきてよかったと思うか？」

『えっ？』

「おれに生きててほしいと思うか？」

初めて見た。エースさんの弱い部分。
そしてそれは私もよく知っていた。

『そんなの当たり前じゃないですか。だって私はずっと、貴方に会ってみたいって思ってたんですよ？』

「……お前って、やっぱ変なやつだな」

今までだったら嫌な気持ちになっていただろうその言葉が、私の胸を抉ることはなかった。

だってエースさんの目が酷く優しかったから。

それに、教えてもらったから。
＂違って当たり前なんだ＂って。

『エースさんはもしかして、自分が生きていていいのかを知りたいんですか？』

「……なんでそう思う」

『私も同じこと考えたことあるんです。というか今でもたまに考えるんです。でもそう言う時は決まってお母さんの言葉を思い出します』

「言葉？」

険しい顔をしたまま首を傾げたエースさんを横目に、過去に意識を飛ばす。

思い出の中のお母さんは、いつだって優しい顔して笑っていた。

＿＿＿＿＿

＿＿＿

「どうしたの？ステラ」

『ねえお母さん。私、生きてちゃいけないの？』

「どうしてそう思ったの？」

『皆が言うんだ。

「バケモノ！」って。
「消えろ！」って。

それにね、私知ってるよ。
私のせいで悪いこと起きちゃうんでしょ？だから……』

山を下りれば浴びせられる悪意にすっかり落ち込んでいた日、川を眺めていた私の隣に座ったお母さんは優しく背中を撫でてくれた。そしてこう言ったんだ。

「生きることになんで他人の評価がいるの？」
と。