3話 ページ16
「まあいっか。おれには敬語じゃなくていいぞ」
『サボさんって何歳なんですか?』
「おれは9だな!1個差なんてそんな変わんねーし、な?」
『いやでも……』
歳上の人を呼び捨てにするなんて。しかも外の人間。
信用できるわけない。
───あんな思い、二度としたくない。
その点だけでいえば、島をめちゃくちゃにしてくれた犯人に感謝してる。
……なんて、私さいていだな。
すごく、さいていなヤツだ。
「悪い。嫌だったよな。
急にそんなこと言われても困るよな。は、はは。ごめん。
でも、いつかそう呼んでくれたら嬉しい。また明日な!」
そう言ってバタバタと森の奥に消えていった。
その背が完全に見えなくなってから私も帰路に着く。
その途中、何度も寂しそうに笑う彼の顔が頭から離れなかった。
うーん。やっぱりよく分からない。
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それから毎日、日が沈む少し前にこの場所で集まって、少しだけ話をした。
好きなもの。
好きなこと。
好きな場所。
それから、将来のことも。
どうやら彼は海賊になりたいらしい。エースさんと一緒に。
サボさんが語るゆめの話はキラキラしていた。
私もいつか。なんて、
昔、えがいていた夢をいつの間にか話していた。
たった10分程度の短い時間。
でもこの時間が私は好きだった。
だって、なにもかもを忘れられるから。
まるで昔にもどったみたいに笑っていられた。
キラキラかがやく未来を想像していた。
今でもたまに考える。
私が産まれなければこんなことにはならなかったんじゃないかって。
知ってるんだ。私の家族と人間がけんかするようになったのは私が産まれたからなんだって。
黒でもない。赤でもない。だれともちがう目の色。
「わざわいを引きよせる存在」だそうだ。
最初はそんな力持ってない、と訴え続けた。
でもあんなことになった以上、本当にそうなんじゃないかと恐れてしまう。
───私がみんなを、殺してしまったんじゃないか、と。
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作者名:パティあす | 作成日時:2020年1月1日 19時