違うこと-1話 ページ14
目を瞑って集中しているステラの眉間にはシワが寄っている。そのシワ目掛けて人差し指を押し付ける。
『イテッ』
突然の衝撃に驚いて目を開けたステラの視界に映ったのは見覚えのある帽子をかぶった少年だった。
『あ、貴方は……
えっと、たしか……』
「サボ」
『サボさん！』
なかなか名前が出てこないステラに、苦笑しながら自身の名前を伝える。ステラもステラでどこか居心地が悪そうだ。
「1ヶ月ぶりだな。元気してたか？」
『はい』
「何してんだ？」
『別に、特には』
「ふーん。そっか。なあ、名前なんて言うんだ？」
『え？』
自分との温度差に気づいていながら、特に気にした様子もなくグイグイ話しかけるサボ。さすがのステラも若干引いていた。
「いやだから名前」
『……ステラです』
「そっかステラか〜良い名前だな！」
『ありがとうございます』
押しが強すぎるせいで名前を教える羽目になったが、それでも自分の名前を褒められるのは嬉しくない筈がない。言葉は素っ気なくとも口元が緩んでいるのは隠せていなかった。
「やっと聞けたー エースのやつぜんっぜん教えてくんねーんだよ。ここで会えてラッキーだ」
『そうですか？』
��ラッキー��と言いながら後ろに倒れたサボに、キョトンとするステラ。
「ああ。だってアイツいっつも「知らねー」しか言わねえんだぞ？知らないわけないのになー？」
『どうでしょうね。本当に知らないんじゃないでしょうか』
手を後ろで組んで空を見上げるサボにならって、隣に腰かけ同じように空を見上げる。清々しい程の快晴だった。
「そんなことないさ。アイツはあんな見た目で案外良い奴だからな！」
そうは言われても納得は出来ない。だって同じ家にいて、基本話さないのだ。話すとしてもおい、お前、呼び。
そりゃあ疑うのは当たり前だ。
「そういやステラ、いっつもこの時間はここ居んのか？」
『いえ、たまたまです。暇だったので』
サボが突然、何かを思い出したように飛び起き、尋ねた。
あまりの顔の近さにちょっぴりドギマギしながらもその質問に答える。
そんなステラの右手には分厚い図鑑のような本と可愛らしい日記帳が入った紙袋が握られていた。
「ふーん。この時間暇なのか？」
『そうですね。だいたいは』
「じゃあ明日もここで話そうぜ！またな！」
まさに、嵐のような速さ。
そんなサボをステラは後ろ姿を唖然とした顔で見つめていた。
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作者名：パティあす | 作成日時：2020年1月1日 19時
