広い空の下で (ページ12)

今日:7 hit、昨日:13 hit、合計:89,211 hit

4話ページ12

あれから1ヶ月が経とうとしていた。
特に変わったことも無く毎日同じことの繰り返し。
いい加減慣れてきたせいか、あの日のことが昔のように感じられる───ことも無く今でも鮮明に思い浮かんでは消えていく。

燃え盛る森の木々、充満する焦げた臭い、止まない雨、血に染る大地、そして・・・

「ステラ？どうかしたか？」

『あっいえ！』

「持ってくぞ、これ」

『お願いします』

肩にポンと手を置かれた感触とバンさんの声でハッとする。
危ない危ない、気をつけないと。

・

「やっぱりステラの作る飯は美味い二ー」

『そんな大層なものじゃないですけどね』

「お前みたいなガキが一丁前に謙遜するんじゃないよ。素直に褒め言葉として受け取っておきな！」

たしかにお頭の言う通りだ。

子供らしからぬ子供。
それが俺の、ステラに抱いた第一印象。

『そうですね。ありがとうございます』

言動も発想も何もかもが子供らしくない。
エースもエースで大概だが、まだ子供らしく見える。

「ステラは何でも出来るだ二ねー」

『よくお母さんやお父さんの手伝いをしてたから出来るだけで何でもは無理ですよ』

俺がステラくらいの頃は、あんなに賢くなかったぞ。
手伝いだけでこんなできるものか？いや、料理ができるのはいいとしてあんな物分かりの良い8歳児がいるもんなのか？

「そういえばステラはどんなところに住んでいたんだ？」

『私が住んでいたところはニュイテトワレ島です。
星が綺麗なんですよ！此処よりかなり寒いですけどね』

「どうしてここに来たんだ二？」

飯を食いながら世間話程度に聞いたのは、マグラだった。
それに食いつくようにドグラが質問を重ねる。

『……家出、ですかね』

そう答えたステラはへらりと笑ってみせた。
後ろで拳をぎゅっと握りしめ、かすかに震えながら。

何があったのかは知らないが、家出では無いのは火を見るより明らかだった。

唯一知る、こいつの子供らしいところ。
たまにあるのだ。例えばさっきのように一人で作業している時、心ここにあらずといったふうに遠くを見つめてぼんやりしている。

そういう時に声をかけると、一瞬怯えた目をする。
エースのような敵対視故の拒絶とは違う、恐怖故の拒絶。

本人は隠しているつもりだろうが、案外分かりやすい。

そこだけは普通の子供と同じだった。