◇ ページ12
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「──好きなんですよ、昔から」
材料のケースから1つ貝殻を取り出すと、それ眺めながら呟く。
「僕は、大切なものは傍に置いておきたい主義でして……人間観察やテラリウムが好きなのも、その表れなのかもしれません」
『────』
「管理するのは大変ですが、大切なものがどこか遠くへ行ってしまうのなら、こうして──自分の作り上げた小さな箱庭に仕舞いたいと思ってしまうんです」
ジェイドくんが私の方を向き、視線がかち合う。
「Aさんなら──僕の気持ち、分かっていただけますか？」
彼の金色の瞳が、真っ直ぐと私を見つめた。
彼が繰り返していた "大切なもの" に直感的に何かが脳裏をよぎる。
馬鹿だけど、なんだかんだで頼りになるあの2人。
そして、ワガママで、意地っ張りで……1番傍にいてくれるあの小さな猛獣。
『……ジェイドくんの気持ち、分からないこともないよ。私もここに来てから、大切なものがいっぱい増えたし。でも──』
黒い手袋で包まれた、彼の大きな手を両手で握る。
『──大切なものとはさ、一緒に陽の当たるところでのんびりしたいな』
一瞬、ジェイドくんの瞳が驚いたかのように見開いた。
「……ふふ、そうですね、それも良い。なら今度、アズールとフロイドをキノコ狩りにでも連れて行きましょうか」
『それはやめた方がいいかも』
いつもの胡散臭い笑顔に戻ったジェイドくん。彼のことはよくわからないけど、今は大丈夫だからいっか。
今日はもう遅いので、オンボロ寮まで送ってもらうことになった。
『──そういえばさっき、私にユニーク魔法使ってなかった？』
テラリウムを両手に抱え、彼に問いかけた。
「いえいえ、使っていません。1度しか使えない貴重な魔法ですから──然るべき時に、ですよ」
『……そーなの』
何ともいえない返しにモヤモヤしつつ、私たちはオンボロ寮へと向かって足を進めたのだった。
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続く
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←箱庭の中で ◈Jade◈
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作者名：はさみまもの | 作成日時：2021年11月13日 16時
