病的ヒーロー、病病君。 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:12,111 hit

〘病病君〙ページ1

「来世は“個性”が宿ると信じて…
屋上からのワンチャンダイブ！！」

そう叫ぶのは爆豪勝己。
雄英のヒーロー科を目指している。

ばっ、とそれに振り返る緑は、
緑谷出久。以下同文。

席に座ってその光景を見つめる俺は、
病病A。雄英は目指してる訳じゃない。

「何よ？…ッて何見てんだよ病気野郎！
気持ち悪いんだよ死ね！！！！」

…暴言の嵐である。
彼とかかわった瞬間からこうなる。
クソ、関わんなきゃよかった。…うーん。

「うるさいな」

そう笑えば爆豪はぐっと拳を握った。

「は？」

「は？じゃなくて。それと、
俺は病気野郎じゃない」

席を立つ。

面倒臭いことはやっぱりいつだって嫌いだ。

「たった１つの俺の個性を馬鹿にすんな」

小さく緑谷にごめん、と呟いた。

　

緑谷が俺の声に反応した。

緑谷はその意味に気づかないらしい。

…俺は正直、ちょっと怖かったんだよ、緑谷。

「優しいよねー」

まるで、ヒーローみたいだ。
人を助けるためなら、あと一回しか使えない、自分の
ライターだって、他人のロウソクに灯すんだろう。
俺は緑谷のそういうところが嫌いで、好きだった。

　
「お前の個性はいいよねぇ」

「舐めんな殺すぞ」

「Aくん！危ないよ、」

「まあ」

別に、先生だって、なんにも言わないし。

「……ハー、」

「“鬱”」
　
地面が揺れた。個性ってのは、どうも暴力的で、いやだ。

「ァ”ア”！？！？」

爆豪が怒鳴る。

「テメッ、巫山戯やがって！！死ね！！」

また地面が揺れた。今度は爆豪の個性でだ。

「やめろよ！！二人共！！！！」

緑谷がとめる。いやお前、怖いとかいう感情ないの？
抜け落ちてるの？ヒーロー志望って皆そういう感じなの？

ああでも、手が震えてる。怖いんだろうな。

なんでこういうやつに個性がないの？

世界って理不尽だ、俺に、そういう権利なんてないけど。

世界で病気に苦しんでる人がいて、
その人がいないと、俺の個性は成り立たない。

トン、と音を立てた。
俺の足音だ。

「シね！！！！」

「言葉遣い悪男じゃん」

ドカン、と音がなった。
甘い匂いがした。ニトロってこんな感じなんだ。

「解、正常認識。改、異常認識。…咳。」

本当はこんなこと言わなくたってできるけど、
言ったほうがカッコいいじゃん。

爆豪が倒れた、音がした。

病気にかっこいいもヘッタクレもないけど。