『呪術廻戦』‎ 短編短歌短足的スピード更新 (ページ9)

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呪いの籠められた音ページ9

「悟」
「おう」

夏油の目の奥が暗く灯った。
それを見逃す五条ではない、頭が冷めてく感覚に襲われる。
だが、返ってきた言葉は優しさを帯びたものだった。

「お前は変わらないな」

足元に降下した血液が一気に向上し、想像以上の柔らかい声色に背中が痒くなる。

「あァッ？！んだよ、言いたい事あるならズバッと言えっての！」

居心地悪そうに頭を搔く、その姿に自然と目を細めた。
不器用のくせに頭は回る親友からの眼差しを向け、影はなりを潜めていくようだった。

ゆっくりと口は開いた。

「いやね、彼女には幸せになってくれるといいな、と思っていただけさ」

ついて出た事は形だけの優しさだった。

綴じられた言の葉。それは表を見ただけでは計り知れない。
その心は1枚1枚重ねられて出来たもの。数限りない魂、幾多の歳月の果てに染められた彼だけの物語が、息づいている。

もうその心音は、親友の声には呼応しない。

机の中に仕舞われた呪いを見る事。それを選択しなかった彼に、まして気付きもしない五条にはもう、

許される事はないのだ。