『呪術廻戦』‎ 短編短歌短足的スピード更新 (ページ7)

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飴◉みっつ✰︎みっつページ7

すすり泣いていた。この、皆が居た教室で。
窓辺に立ち、夜空を見上げていた。

口寂しくってポッケに入れてあった飴をゴロゴロと机に落とし、ひとつ封を切ると口に投げた。
舐めようと思っていてもつい噛み砕いて喉に流してしまう。

みっつめ。星を眺めたまま後ろの机に手を伸ばすが空振り、全く掴めない。
仕方なく視線を後ろに向けると飴玉のようなまんまるとした瞳と目が合った。

「…よぉ」
「あ、…おつ」

伏黒が廊下に立っていた。何と言おうか考えあぐねていると「入っていいか」と尋ねられた。肯定する。

少し躊躇いがちに教室に踏み込み、私の傍に来る。
「生姜味の飴あるよ、要る？」ぱっと手に取り差し出した。

「要らねぇ、ってか何で持ってんだ」
「色んな気分の時持ってた方がいーじゃん」

断られたので私が頂く。するとガリンと直ぐ噛んでしまい小さな後悔を重ねた。

伏黒も私も、何も言わずに夜空を見た。

「ごめん」

そう口を開いた。
やっぱり。伏黒はそれを伝える為に私を探していた。
泣いてる私を見付けてしまって何も言えずに教室の前で立ち止まってたんだ。

“虎杖は死んだ伏黒の目の前で”

そう知らされた時には喪失感が体を襲った。あんな優しい奴が、あんな呪いのせいで。

こんな、呪われた世界のせいで。

どこにぶつけたらいいのかわからない気持ちでいた。
理由も曖昧なまま涙が溢れる。ごろごろとまぁるい玉が落下してく。

隣の男は顔を伏せた。

「ごめん。俺が勝手に助けて、…見殺しにした」

私の肩が上がる。「違うでしょ」そう言いたいが押し止めた。

「皆に。俺や釘崎やAに長生きしてほしいって、あいつ言ってた」

伏黒は今どんな顔をしてるんだろう。自分でも驚いたが虎杖の言葉よりも知りたいと思った。
私以上に虎杖を悔やんでいるのが如実に伝わってくる。その姿を目の当たりにして、やるせない私の気持ちが救われた気がした。そして…

今、することは同級生の死を嘆くことではない

頭に降りかかる冷めた思考がそう語りかけていた。
背けていた身体を伏黒に向け、迷わず左手を引く。

「歯ァくいしばれ」

ガツンと拳で頭を殴り飛ばした。

椅子ごと倒れた伏黒を見下ろす。
思った以上の良い音と感触にごめんと心の中で謝った。

「早く気付け馬鹿」

床に突っ伏したまま何も言わない伏黒。胸ぐら掴んで顔だけ起こして睨み付けると、私と同じ顔をしていた。

「そんなんじゃ虎杖も報われないでしょ」

隙だらけの男に唇を重ねた。