平野くんを本気にさせるには。 (ページ7)

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「かわいいこと言うね」

耳元で聞こえる平野くんの声と、私を抱きしめながらすっと頭に触れる平野くんの大きな手。

「頭ポンポン……？」

「なんかA、可愛かったから」

「っ……！」

あぁ……私ってなんでこんな単純なんだろう？

平野くんの行動や言葉一つでこんな喜んじゃって。

好きっ……ほんとに好き……っ。

この気持ちが平野くんに伝わってほしくて、ギュッて抱きしめる力を強くした。

「……積極的」

って言いながら、同じくらいの力で抱きしめ返してくれる平野くん。

こんな関係、おかしいってわかってる。

頭ではわかっていても、気持ちが……身体が平野くんを求めてしまう。

このまま平野くんが私のものになってくれたらいいのに……。

そんなこと考えても無駄なだけだって、わかっているくせに。

口に出したって伝わらないって、わかっているのに。

いま目の前にいる平野くんが好きで、好きで仕方なくて。

「好きっ……」

平野くんの腕の中で小さく呟く。

ビクッと平野くんの身体が反応したのがわかる。

けど、なんにも言ってくれない。

「平野くん……好きっ……」

なにか反応してほしくて、今度はちゃんと聞こえるくらいの声の大きさで伝える。

「うん、知ってる」

「平野くんは……？」

「……好き」

「……そっか」

嘘ばっかり……ほんとは好きなんて思ってもないくせに。

平野くんの好きは相槌みたいなもの。

うんとかそっかみたいな。

私の好きに平野くんは絶対応えてくれない。

わかっていても、平野くんが好きって私はすごくバカ。

いつまでたっても届かない想いを胸に抱えているだけ。

……この恋は実らない。

だって平野くんは、誰かに本気になったりしないから。