21. 産屋敷邸 ページ21
「ここが、産屋敷邸ですか?」
車を降りたAが、目の前の屋敷を見上げながら目を瞬いて言う。
「すごい。旅館みたい…。」
俺も車から降りると彼女の隣に立った。
「産屋敷家は日本でも有数の業績を誇る一族だ。主にホテル産業や医療、病院、エネルギー資源に携わっている。」
「え、産屋敷家って、あの『Ubuyashiki Corporation』の産屋敷ですか?」
「うむ、そうだ。表向きは新たな市場分野の開拓をするベンチャー企業、裏では鬼殺隊本部として鬼を追っている。」
そういうと、Aはほうっとため息のような感嘆の声をあげた。
産屋敷邸についたのは、夕刻前。
現在の産屋敷邸宅は100年前とほぼ変わらず大きな屋敷になっている。
関東大震災や第二次世界大戦の被害にあっても何度も建て直された。
敷地は微かに青色を帯びた砂利で敷き詰められ、所々飛び石がある。
広い庭にはたくさんの藤の花が咲いていて、清らかな花の香りがした。
「炎柱様!」
屋敷の中から、黒づくめの男が慌てた様子でこちらへ駆けてきた。
「お怪我をされたとお聞きしましたが大丈夫ですか?今すぐ手当て致します。」
「後藤か、ありがとう。」
後藤は産屋敷家に仕えている隠の一人だ。
隠とは鬼殺隊が鬼を倒したあと事後処理をする部隊で、傷の手当ても行ってくれる。
縁の下の力持ちで、なくてはならない存在だ。
後藤がAに気づいた。
「炎柱様、もしやこの方は…。」
「うむ、お館様より言われているお方だ。案内を頼む。」
「御意。」と後藤は頭を下げると、Aに一礼した。
Aが不安そうに俺の顔を見ている。
「大丈夫だ、俺もあとで行く。」
そう言うと、Aは黙ってこくんと頷き、後藤に案内されていった。
額にゆっくり手のひらを当てる。
トンネルで負った額の傷は、Aが応急処置をしてくれたおかげで、早めに止血できた。
彼女が手当てする際、彼女の艶のある髪やパッチリとした澄んだ目がすぐ鼻先にあった。
心配そうに傷に触れる手が優しく、柔らかく、暖かい。
慣れたように処置をする彼女を見て、胸が切なくなると共に、心のなかで何かが着火された音が聞こえた。
その音は彼女を見るたびに、大きくなっていく。
君はやはり、お館様の言う『運命を変える人』なのか。
その時の俺にはまだ、その判断ができなかった。
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favo(ふぁぼ)(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉ちゃん!お久しぶりです☆ありがとう〜😆またちょっとずつ書いていくのでよろしくねぇ☆ (2022年12月22日 7時) (レス) id: 507a9cc00c (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - ふぁぼちゃん、お久しぶりです。完結おめでとうございます。これからも頑張ってね😆 (2022年12月22日 4時) (レス) @page50 id: d20b43a216 (このIDを非表示/違反報告)
favo(ふぁぼ)(プロフ) - チェケラさん» こんばんは!チェケラさん、コメントありがとうございます!わー!大好きって言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます!少しずつの更新で待たせてしまい申し訳ないですが、頑張りますのでどうぞよろしくお願いします! (2022年12月14日 0時) (レス) id: 507a9cc00c (このIDを非表示/違反報告)
チェケラ - コメント失礼します! favoさんの小説毎日読ませてもらっています!favoさんの小説とっても大好きです! これからも連載頑張ってください! (2022年12月12日 21時) (レス) @page27 id: df31792cbc (このIDを非表示/違反報告)
favo(ふぁぼ)(プロフ) - gn001yukaringoさん» わぁ〜!コメントありがとうございます!とても嬉しくて、また頑張ろうと思えました。ありがとうございます!完結まで頑張りますので、どうぞよろしくお願いします! (2022年6月16日 20時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:favo(ふぁぼ) | 作成日時:2021年10月7日 18時