是非に及ばず−現代鬼殺隊−【煉獄杏寿郎】

3. 闇に潜むのモノ ページ3

街灯がポツポツ立つ裏通りは、繁華街と思えないほど静かだった。



私は張り込みの車からできるだけ近い自動販売機を探して歩く。



今回の連続殺人事件解決に向けて、私は特に意気込んでいた。



女性だけを狙う犯人に怒りを感じていたし、何より男社会の職場に嫌気が差していた。



唯一女性の刑事として配属された環境は決して心地よいものではない。



何かと女性だからと下に見られる。



若いということもあるが、女性は男性と比べて力はないし、臆病者だとバカにされるのだ。



そんな女性を下に見る男達を見返すため、私は今回犯人を捕まえてやる。



一人前の刑事としてみんなに認めてもらうんだ。



そんな想いを持ち、今回の張り込みに着いたのだが。



ここの通りには建物がいくつも立っているが、よく見ると潰れた安ホテルや飲み屋の残骸ばかりだ。



ところどころ、シャッターや壁にスプレーで落書きされている。



なんとも不気味な道で、刑事ながらも少し怖くなってしまった私は早足で自動販売機を探した。



街灯のある一角にぽぅと光る自販機を見つけた。



ホッとして、自販機に駆け寄り、コインをいれて先輩が好きな銘柄のコーヒーのボタンを押す。



さっさと買って早く車に戻ろう。



ガタン、ガタンと音を立てて落ちた2本のコーヒーを取ろうと身体を屈めた時だ。



「こんばんは、お嬢さん。」



男性の声が後ろから聞こえた。



それまで人の気配がしなかったので、驚きながら振り向いた。



そのとたん、血の凍るような不気味さに私は息が止まりそうになる。



私の目の前にいたのは、ピエロだった。



顔は真っ白なのに唇とボサボサの髪の毛は血のように赤色。



ひだの付いた襟に、だぼっとした不格好な服を着たピエロの格好をした人がそこで笑っている。



「こんばんは、お嬢さん。今日は月が綺麗ですね。」



もう一度彼が挨拶をする。



私は恐る恐る身体をピエロに向けた。



「こ、こんばんは。」



声が震えている。



「ふふふ！怖いですよね、すみません。」



ピエロが嬉しそうに私に言う。



「心配しなくても大丈夫です、私はあなたをスカウトしに来ました。」



「ス、カウト？」



「あなたは選ばれました。ふふふ！あなたほど素敵な女性はいません！」



ピエロが、さも可笑しそうにかくかくと肩を上下に揺らしながら笑う。



背中がゾッとした。



そしてピエロは目を赤く光らせると、不気味に笑って見せた。

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