6. 私の苦手なもの ページ6
私は小さい頃からピエロが苦手だった。
なぜ苦手なのかと理由を聞かれても明確に答えられない。
本来なら面白い格好をして人々を笑わせてくれるキャラクターなのに、私にとっては恐怖の対象でしかなかった。
あの白い顔に赤い鼻、そして大きな赤い口がなぜかとても恐ろしく感じるのだ。
そして昨日出会ったピエロに、私は強い恐怖を憶えていた。
あんなものが存在するものなのか。
目の奥から禍々しい、深く底なしの闇が見えた。
あれは人間ではない、何かの化け物だと分かる。
それに比べ、黒い服を着た幽霊からは人の体温のような暖かさを感じた。
ピエロとは違う、不思議な強さを纏ったものだった。
あの黒服の幽霊だけは恐ろしいものを見た気持ちはしなかった。
むしろ、美しい鉱石のような瞳に意識が吸い込まれそうだった。
綺麗でかっこ良かった。
「……何を考えているんだ私は。」
一課のパソコンを閉じながらひとりで呟いた。
今まで霊感なんて無かったのに、突然前触れもなく黒い服を着た幽霊を見てしまうなんて。
またあわよくば会いたいと思ってしまっている。
これで他の幽霊まで見えちゃったら、私は恐ろしくて夜道をひとりで歩けなくなる。
……。
今日はジムで汗を流して、嫌なことは全部忘れて帰ろう。
その方が無駄なことを考えなくてすむし。
誰も座っていない課長のデスクに始末書を提出して、私はバッグを肩にかけた。
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私はジムでひたすら筋トレとランニングマシーンで汗を流した。
体を動かすと、自然と気持ちが前向きになり、いい気分転換になる。
存分に身体を動かし、シャワーを浴びてすっきりした私は、マンションに帰るためジムを出た。
夜道をひとり歩く。
午後9時を過ぎると、このへんは車さえ通らない。
シンと静まり返った公園、歩道橋、交差点。
家はもうすぐそこなのに、急に不安な感覚が呼び起こされた。
誰かがヒタ、ヒタと私に近づいているように感じたのだ。
後ろから足音が聞こえてくるようだ。
恐ろしくなって、思いきって振り返った。
……。
誰もいない。
良かった、気のせいだった。
ほっとして前を見た瞬間、息が止まる思いがした。
そこには髪の毛の赤いピエロが立っていた。
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favo(ふぁぼ)(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉ちゃん!お久しぶりです☆ありがとう〜😆またちょっとずつ書いていくのでよろしくねぇ☆ (2022年12月22日 7時) (レス) id: 507a9cc00c (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - ふぁぼちゃん、お久しぶりです。完結おめでとうございます。これからも頑張ってね😆 (2022年12月22日 4時) (レス) @page50 id: d20b43a216 (このIDを非表示/違反報告)
favo(ふぁぼ)(プロフ) - チェケラさん» こんばんは!チェケラさん、コメントありがとうございます!わー!大好きって言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます!少しずつの更新で待たせてしまい申し訳ないですが、頑張りますのでどうぞよろしくお願いします! (2022年12月14日 0時) (レス) id: 507a9cc00c (このIDを非表示/違反報告)
チェケラ - コメント失礼します! favoさんの小説毎日読ませてもらっています!favoさんの小説とっても大好きです! これからも連載頑張ってください! (2022年12月12日 21時) (レス) @page27 id: df31792cbc (このIDを非表示/違反報告)
favo(ふぁぼ)(プロフ) - gn001yukaringoさん» わぁ〜!コメントありがとうございます!とても嬉しくて、また頑張ろうと思えました。ありがとうございます!完結まで頑張りますので、どうぞよろしくお願いします! (2022年6月16日 20時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:favo(ふぁぼ) | 作成日時:2021年10月7日 18時