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どうやらA先生は目をネクタイで覆わなくても、もう大丈夫な様子だった。
倉庫の中は月明かりだけの淡い光で包まれている。
月に照らされた彼女は恥ずかしそう俯きながらも顔を赤らめているようだ。
その様子は悩ましいまでに柔らかく、女性らしかった。
ふたりの間に静かな沈黙が流れる。
彼女の髪から、ほのかに石鹸の香りがした。
外から虫の鳴く声だけが聞こえてくる。
「煉獄先…。」「A先…。」
沈黙を破ったのは、ふたり同時にお互いの名前を呼ぶ声だった。
ふたりで思わず顔を見合わせる。
そしてA先生は肩をすくめるように、ふふっと笑うと、
「同じタイミングでしたね。」
花のようにふんわりと笑顔を見せて、はにかんだ。
「ふふ、そうだな。」
俺もつられて思わず一緒に笑ってしまう。
A先生の照れた顔を見ていると、彼女を守りたいという本能が泉のように湧き出てくる。
「君の彼氏が羨ましいな。」
思わず溢れでた想いが、口から出てしまった。
「え?」
彼女が驚いたように言う。
「いや、すまない。不本意とはいえ、君のような可愛らしい女性と一晩過ごすことになってしまったんだ。彼氏も連絡がつかず心配しているだろう。」
A先生の彼氏のことを思うとなんとも煮え切らない気持ちが沸いた。
彼女に心奪われそうな自分に気づいたからだ。
A先生の顔を見ると、彼女は最初驚いたような顔をしていたが、ふふっと照れたように笑った。
「私、彼氏いないですよ。」
「むっ」
彼女の言葉に驚きを覚えた。
こんな可愛らしい女性を周りの男が放っておくはずがない。
だから彼氏もてっきりいると思っていたのだ。
「そうか…。」
思わずホッとしたようなため息が出る。
「煉獄先生は?」
彼女の瞳が俺を見つめる。
目が潤んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
「俺もいないな。」
そう言うと彼女は微笑み、
「そうなんですね、良かった。」
呟くように小さな声で言うと、恥ずかしそうに俯いてしまった。
その反応は君にも気があると期待をしてもいいのだろうか。
胸の奥から沸き上がる熱い『何か』を感じた。
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favo(プロフ) - まゆさん» まゆ様☆ありがとうございます(*´∇`*)嬉しいです。少しずつですが、書きしだい更新させて頂きますね(o^∀^o)またどうぞよろしくお願いします! (2021年9月20日 14時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - 続きが気になります!更新楽しみにしてます(*^^*) (2021年9月20日 10時) (レス) id: 3becc2e6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:favo(ふぁぼ) | 作成日時:2021年9月18日 18時