心燃ゆるは君がため【煉獄杏寿郎】

46. 誰（た）がため ページ46

都内一大きなスクランブル交差点前に設置されている、超大型液晶テレビ画面。



多くの人が行き交う中、女性アナウンサーがテレビ画面に現れニュースが流れる。



「ニュースをお伝えします。今日午後７時に起きた都内高級ホテル火災は未だ激しく燃え、鎮火に至っておりません、中継です。」



画面が切り替わり、ホテルの前に立つヘルメットを被った女性キャスターと、大きく『中継、ホテル火災』と書かれたテロップが映し出される。



「こちら、高級ホテルの前から中継しています。ご覧の通り、火は未だに消し止められておらず、ほぼ最上階に近い場所から煙と炎が激しく上がっています。」



カメラがホテルの煙と激しい炎を映し出した。



「まだ消防隊員一人と女性一人の安否が確認されていませ……きゃぁ！」



ドンと大きな爆発音にカメラが揺れて、映像がぶれる。



大型テレビの前を歩いていた人が何事かと足を止める。



またひとり、またひとりとテレビの前に人が止まった。



中継していた女性キャスターが真っ青な顔で声を上げる。



「い、今！ホテルの最上階で大きな爆発がありました！繰り返します！大きな爆発がありました！」



カメラは一生懸命最上階にピントを合わせる。が、煙で状況が分からない。



「白い煙が大きく上がり、コンクリートの破片が、パラパラと落ちてきます！」



「爆発の原因はわかりませんが、火事のあった最上階付近で爆発があったようです。建物は崩れていません！」



「ただ、ホテルに残された消防隊と女性の安否は未だ分からない状況です。」



スクランブル交差点前のテレビ画面付近を動く人はいなかった。



いつしか皆、固唾を飲んで中継を見守っている。



「今すぐ救助が求められま……あ……。」



女性キャスターの動きが止まった。



目を見開き、一点を見つめ、信じられないと口に手を当てている。



白い煙のたつ先、規制線が張られたホテルの出入口に人影が映った。



ひとりの消防士が防火ヘルメットをかぶった女性を横抱きに抱いている。



「今、消防隊員と女性が出てきました！信じられません！あの爆発の中、消防士が女性を救助しました！女性も無事のようです！」



キャスターが歓声を上げるように叫んだ。



その消防士の姿は、一度見たら消して忘れないほど、炎のように熱い英雄だった。



テレビの前にいた全ての人の歓呼の声が、打上花火のように、どよめきのように暫く起こったのだった。

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