心燃ゆるは君がため【煉獄杏寿郎】

34. 部屋からの脱出 ページ34

煙の匂いとズキズキ痛む頭痛に目が覚めた。



ゆっくり身体を起こし、手で首の後ろを擦る。



気を失っていたのか。



ぼんやりしながら一瞬考えるも、ハッと気づいた。



火事！そうだ、火事だ！



思わず部屋を見渡す。



煙の匂いはするも、まだここまでは火が来ていないようだ。



急いで部屋のドアを開けようとするも、鍵が掛かっている。



鬼舞辻、彼はさっさと逃げてしまったらしい。



こんこんと怒りが湧いてくる。



「開けて！誰か、開けて！！」



ドアを拳でドンドンと叩くが何の音も聞こえない。



急いで窓際へ移動して下を見ると、思わず背筋が凍った。



遥か下にたくさんの赤い消防車とすぐ下の階から煙が吹き出しているのが見えたからだ。



早く逃げ出せなければ、ここも危ない。



ふと窓のそばをヘリコプターが屋上へ飛んでいくのが見えた。



屋上だ、屋上なら助かるかもしれない。



窓を開けようとするも、ガラス窓は転落防止のため内側から開かないようになっており、ベランダもない。



廊下から外にでて階段で屋上に行くしかない。



部屋にあったデスク用椅子を掴むと肩に担ぐように持ち上げる。



これで部屋のドアを破るのだ。



ずっしりとした重みで足がふらつきそうになるが、バランスを取って、思いっきりドアに投げた。



大きな音と共に椅子が下に転がる。



諦めるな、もう一回、今度はもっと勢いをつけて……。



さっきよりも助走をつけて思いっきりドアにめがけて投げる。



するとちょうどドアノブ付近に椅子が命中しドアが壊れた。



良かった、出られる！



急いで廊下にでると、廊下はうっすらと煙に包まれていた。



少し咳き込みながらハンカチで口元を押さえ、廊下の先の光が差している場所へ走る。



廊下の先のドアを開けると、外階段に出られた。



これでこのまま屋上に上がれば助かる。



安堵した気持ちで階段に降りようとした時、後ろの廊下の先で誰かの叫び声が聞こえた。



パーティー会場の方からだ。



まだ外に出られずに逃げられない人がいる。



ざわっと髪の毛が逆立ち、学生時代の学校の火事を思い出した。



胸が息苦しいほどドキドキする。

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