31. 彼岸花 ページ31
ホテルの男性は大柄の男性に両腕を羽交い締めにされて外へ連れ出された。
「待ってください!鬼舞辻様!どうかお許しください!鬼舞辻様ァ!」
ドアがバタンと閉まり、何も聞こえなくなった。
あまりの突然の出来事に頭が真っ白になる。
ただただ感じるのは、恐怖だけ。
「さて…。」
思わず体が硬直し、ビクッと肩が跳ねる。
「何の話だったかな?」
鬼舞辻さんがゆっくり私を見る。
先ほどの雰囲気とは別人のような、黒い圧力が私を襲う。
「火が止められないというのは…、どういう事ですか。」
今にも消えてしまいそうな震える声で聞いた。
「君には何も知らずにいてもらいたかったが…。」
そう言うと、ゆっくり椅子から立ち上がった。
「さっきの男が言うように、下の階の電気室から火が出てしまった。うちの従業員はボヤひとつ消せなかったようだ。」
「それなら、早く消防車を呼んでみんな避難を」
「君はこの私の事をよく知らないようだ。」
憎悪みなぎる声に体が強ばる。
鬼舞辻さんがゆっくり私に近づく。
「今避難させたらホテルは混乱する。もうすぐ私のヘリが到着する、それまで彼らには何も知らずにいてもらう。」
「そんな…、今すぐ避難を」
「私に指図するか。」
鬼舞辻さんの殺気が放たれる。
「何をそんなに偽善ぶる。君はそんなに善人なのか?」
彼がテーブルの生け花から彼岸花を引き抜いた。
「この世の中、金のために人間は動き、人が人を支配している。実際君はどうだ?客のことは二の次で自分の利益を上げることしかしなかったじゃないか。」
「それは…!」
「私がそう言ったからか?」
彼が嘲笑う。
「私の下でなければ君は店を立ち上げられなかった。自分の力では何もできないからだ、人のせいにするのは君の他力本願さゆえだ。」
「すべては自分のことしか考えない利己的な人間が引き起こした結果だ。」
「だが、私はそんな弱くて醜い人間らしいところが好きだ、すべて支配してやりたくなるほどな。
どうだ、私と来ないか?」
唇を噛みしめ、キッと睨み付ける。
「私は…行かない。」
「そうか、残念だ。」
そう言って、私の前に彼岸花を差し出した。
「Aさん、赤いお花は好き?」
背筋がぞっとして思わず手を払いのけた。
「ふふ、せいぜい後悔するといい。」
突然首筋に重い衝撃が走ると、その言葉を最後に私はそのまま意識を手放した。
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favo(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉さん!いつも声かけてもらい、本当に元気をもらえました、ありがとうございます!素敵な設定なんて言ってもらい私も嬉しかったです☆もし新作できた際にまたお会いできるのを楽しみにしてます☆ありがとうございました! (2021年8月26日 17時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます。炎柱様が消防士!素敵な設定でした。他の柱の方も登場し、連帯の強さも柱時代と同じだあって、思いました。楽しい作品、ありがとうございました!!新作も楽しみにしています(^.^) (2021年8月26日 14時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
favo(プロフ) - tubinさん» tubin様、コメントありがとうございます!とても嬉しいです!引き続き頑張りますので、またどうぞ宜しくお願いします☆ (2021年8月23日 15時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
favo(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉さん☆コメントありがとうございます〜!そう言っていただけて私も嬉しいです!ありがとうございますm(_ _)m☆ (2021年8月23日 15時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
tubin - すごくおもしろかったです!! 無中になって読んでました!! 続きがすごく楽しみです!! 応援してます!! これからもがんばってください!! (2021年8月23日 14時) (レス) id: 73a03e30c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:favo(ふぁぼ) | 作成日時:2021年5月19日 13時