心燃ゆるは君がため【煉獄杏寿郎】

4. 苦い夢 ページ4

何台もの消防車のサイレンが鳴り響く。



建物の窓ガラスが割れ、窓から真っ黒な煙と炎が激しく燃えているのが見える。



学校の教室が燃えていくのを私はただ、外から見ているだけだった。



「ごめん。」



「ごめん！」



「ごめん！！」



………。



ハッと目が覚めた。



心臓の音がドクンドクンと波打っているのが聞こえる。



私の部屋の天井が見えた……。



時計をみると、目覚ましのアラームが鳴る時刻よりも早い時間だ。



「はぁ…、久しぶりに見た。」



顔に手を当てて、深呼吸するようにフーと息を吐く。



私が見たのは夢だ。



「今日がカフェのオープン日だからかな…。」



目から出ている涙を指で拭った。



私は学生の頃、学校の事故で大切な友人を亡くした。



原因は家庭科室のガスコンロの火の不始末。



たまたま現場の近くにいた私達は火事に気付き、友人も一緒に外へ避難したつもりだった。



でも気づくと一緒にいたはずの友人は居なくて私だけが外に避難していたのだ。



その友人と学校を卒業したらいつか一緒にカフェをやろうと約束していたのに。



臆病な私は、自分の命を守るのに精一杯だった。



ベットから起き上がり、テーブルの上の写真に目を向ける。



「…私だけ逃げちゃってごめん。」



手に取った写真には私と友人が笑顔で写っていた。



朝日が静かな町をゆっくり照らしていく。



「あれから数年たっちゃったけど、約束していたカフェ、今日オープンするよ。」



深呼吸をひとつする。



「どうか、見守っていてね。」



そう言って私は友人の写真を胸に当てて彼女を想ったのだった。

5. Wistaria（ｳｨｽﾀﾘｱ）→←3. 古風な女性

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す