愛を込めて花言葉を【煉獄杏寿郎】

42. 春風 ページ42

「そう…、杏寿郎は命を取りとめたんだね。本当に良かった。」



川のせせらぎが聞こえる静かな庭で、お館様がほっとしたように鴉の要を撫でた。



「藤の花の家に住む彼女がきてくれたんだね。」



外には藤の花が満開に咲いている。



「彼女の信じる心が杏寿郎の宿命を運命へと変えてくれたのかな。」



縁側で真っ青な空を見上げる。



「まだまだ先は長い。



ふたりの幸せを心から祈ろう。」



お館様は妻のあまね様の手をそっと握った。



屋敷に爽やかな春風が吹き抜けていった。



◇◇◇◇◇



一ヶ月は寝たきりになるだろうと言われていた大ケガから、煉獄さんはたった二週間で回復した。



あまりの高い治癒力と生命力に驚くばかりだ。



ただ、もう左目が見えないこと、内臓の損傷で以前のように戦うことはもう出来ないとのことだ。



それでも、命を取りとめたこと。



私にとってこれ以上嬉しいことはない。



そして、今日、



「カー!!

エンバシラ、レンゴクキョウジュロウ クル!!

エンバシラ ヤド二クル!!ヤドトマル!!」



鴉の要が私に知らせてくれると、



「すまない！Aはいるだろうか？」



いつもの活気のある声が聞こえてきた。



急いで玄関先に向かう。



「おかえりなさい！」



そう言って煉獄さんに抱きついた。



煉獄さんは楽しげに笑うと、優しい顔を私に向けた。



「ただいま。」



もうすぐ日が暮れる。



ふたりの未来はまだ始まったばかり。



甘く、深い愛がそよ風のように、ふたりを包んだのだった。






「愛を込めて花言葉を」



おわり

あとがき→←41.奇跡

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す