35. 冷や水 ページ35
ふたり、ハッと我にかえったように息が止まる。
「炎柱様、後藤でございます。」
襖の外から声をかけたのはどうやら煉獄さんの知り合いの方みたいだ。
煉獄さんの使いの方だろうか。
「どうした。」
「明日の任務でお渡しするものがございます、今宜しいでしょうか。」
なんというタイミングだろう。
私はこの状況をどうしたらいいか分からず顔を真っ赤にして動けないでいた。
「わかった、今そっちに行く。少し待ってて貰えるだろうか。」
後藤さんの「御意!」という返事があり、煉獄さんは私に困ったように笑いかけた。
なんだか不思議と可笑しくなってしまい、私も大いに照れながらも笑顔を見せて、そっと頭から布団を被ったのだった。
◇◇◇◇◇
煉獄さんが戻ってくるころには、春の夜風もすっかり静まり返っていた。
「すまなかったな。」
部屋へ戻ると煉獄さんは、罰が悪そうに首筋に手をやった。
「いいえ、とんでもないです!」
さっきの方は後藤さんという隠の方で、煉獄さんのお手伝いを担当している方らしい。
「明日の任務で乗る列車の切符を届けに来てくれた。」
そう言って、煉獄さんは布団に勢いよく飛び込み、大の字で寝そべった。
「いい雰囲気で盛り上がったところに、後藤に水を差されたな!」
そう言って煉獄さんはハハハと明るく笑った。
私も緊張が一気に溶けて、あはははと声を出して笑ってしまった。
煉獄さんが愛しそうに私を見つめた。
そして両手を広げて、おいでと言う。
私も煉獄さんの隣に寝っ転がり、その胸の中に収まった。
煉獄さんの手が私の頭を優しく撫でる。
「でも、後藤もいい仕事をしたな。」
「何をですか?」
意図が分からず聞いてみると、
「熱い風呂に入ったあとで身体に冷たい水をかけると、熱がさらに上昇しようと身体の中から燃え上がる。」
煉獄さんが私を抱き締めた。
「冷や水のおかげで、次はもっと燃え昇り上がることができる。
今日は残念だが、楽しみが延びたな。」
煉獄さんが耳元に唇を近づけた。
「任務が終わったら、次こそAを抱こう。」
私は顔に熱を集めながら、煉獄さんの胸に顔を埋めた。
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favo(プロフ) - にこさん» にこ様、最初から最後まで応援していただきありがとうございました☆そう言って頂けて私も嬉しいです(*´▽`*)ありがとうございます!短編集もまた書けましたらお知らせしますので、またどうぞよろしくお願いします☆ (2021年5月21日 8時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れさまでした(^^)すごくよかったです!!とにかくよかったです!!温かくて愛の溢れる作品でした★短編のほうも楽しみにお待ちしてます!これからも応援してますので頑張って下さい。新作も読ませていただきますね♪ (2021年5月20日 12時) (レス) id: 4f5310af0f (このIDを非表示/違反報告)
favo(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、最初から最後までたくさん応援してもらいありがとうございました!元気をもらい、無事完結できました笑(*´▽`*)また更新した時はどうぞよろしくお願いします☆ありがとうございました! (2021年5月17日 18時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 完結おめでとうございます!二人とも幸せで良かった(^○^)短編集も楽しみにしてます! (2021年5月17日 18時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
favo(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉様、コメントありがとうございます!本当に煉獄さんは生きていてほしいと思いました!私の中には生存ifしかありません笑(*´▽`*)新作、また読んでいただけますと嬉しいです!ありがとうございました☆ (2021年5月17日 18時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:favo(ふぁぼ) | 作成日時:2021年4月2日 0時