31. 雨のなかの熱 ページ31
宿につくと、玄関には入らずそのまま裏口へ案内した。
煉獄さんはずっと私のペースに合わせて走ってくれていたようで、私は息が上がっているのに、煉獄さんはまったく平気そうだ。
久しぶりに雨に濡れて、すごく楽しかった。
ふたりでそう笑いながら裏口のドアから中に入り、羽織を取った。
宿は誰もいない為、電気は消えて暗いままだ。
ふたりとも羽織と一緒に頭から水をかぶったようにびしょ濡れだ。
ふと煉獄さんと目が合わさった。
その目が合った瞬間、ふたりの呼吸か何かがぴったりと同調し、不思議な、でも確信に満ちた一体感に襲われた。
聞こえるのは雨の音だけ。
今、ふたりは同じことを考えている。
「A」
煉獄さんが低く囁いた。
私の冷たい頬に、煉獄さんの温かい手のひらがゆっくり沿う。
そしてどちらともなく近付き、煉獄さんの柔らかい唇が私の口を塞いだ。
鼓動がドクドク早い。
短いキスをすると、そっと目蓋を開いた。
煉獄さんの端麗な顔立ちが、雨にうっすりと濡れ、窓の外の光に当たって一層引締って見える。
思わずはぁ…とため息が出た。
すると煉獄さんの目が私を射ぬいた。
その瞳は劣情と情熱に駆られるように燃えている。
頬に添えられた手のひらは私の頭の後ろにまわり、矢継ぎ早に口付けた。
先ほどの柔らかなキスと違って熱い。
ふと私の唇を煉獄さんの唇が熱くこじ開けた。
問うように、愛を囁くように、煉獄さんの舌が私の唇を誘う。
そのキスは、私の身体の奥深く、生温かくくすぶっていた欲の扉を開け放った。
煉獄さん…！
私も自然と舌を絡ませていた。
煉獄さんとのキスが深くなる。
熱い…。
体の中が疼く…。
こんなの初めてだ。
煉獄さんの舌の動きを追っているうちに、もう何がなんだかわからなくなってくる。
ただ気持ち良いという感覚だけが今の私だった。
煉獄さんの舌が、わたしの中で丁寧に体温を吸い取ってゆくとおもむろに唇を離した。
「これ以上は体が冷えるな。」
そう言ってニコッと笑った。
私は煉獄さんのディープなキスで体の力が完全に抜けてしまっていた。
ホッとしたような、もっとキスをしていたかったような複雑な気持ちが入り乱れている。
ふと煉獄さんが私の顔を両手で包んだ。
「今日、宿に泊まってもいいだろうか」
煉獄さんの声が耳に蠱惑的に響く。
私は顔を赤くしながら、こくんと頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 242人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
favo(プロフ) - にこさん» にこ様、最初から最後まで応援していただきありがとうございました☆そう言って頂けて私も嬉しいです(*´▽｀*)ありがとうございます！短編集もまた書けましたらお知らせしますので、またどうぞよろしくお願いします☆ (2021年5月21日 8時) (
レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 完結おめでとうございます！お疲れさまでした(^^)すごくよかったです！！とにかくよかったです！！温かくて愛の溢れる作品でした★短編のほうも楽しみにお待ちしてます！これからも応援してますので頑張って下さい。新作も読ませていただきますね♪ (2021年5月20日 12時) (レス) id: 4f5310af0f (このIDを非表示/違反報告)
favo(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、最初から最後までたくさん応援してもらいありがとうございました！元気をもらい、無事完結できました笑(*´▽｀*)また更新した時はどうぞよろしくお願いします☆ありがとうございました！ (2021年5月17日 18時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 完結おめでとうございます！二人とも幸せで良かった(^○^)短編集も楽しみにしてます！ (2021年5月17日 18時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
favo(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉様、コメントありがとうございます！本当に煉獄さんは生きていてほしいと思いました！私の中には生存ifしかありません笑(*´▽｀*)新作、また読んでいただけますと嬉しいです！ありがとうございました☆ (2021年5月17日 18時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：favo（ふぁぼ） | 作成日時：2021年4月2日 0時
