26. 人のうねり ページ26
満月の夜、外でジィーッとクビキリギスが鳴いている。
ぼうっと照らすお館様の部屋のボンボリの灯りが美しい。
今、屋敷の部屋で、お館様を待っている。
日中は、例の鬼殺隊員三人の柱合裁判があった。
裁判では一般人に害を及ぼした規律違反で、三人とも斬首かそれに相当する厳しい罰と話し合われたが、反省する様子も見られた為、永久的に鬼殺隊から除名ということで解決した。
鬼殺隊の質、鬼の動き、以前の様子とは違う。
何かが大きく変わろうとしている。
「杏寿郎、待たせたね。」
お館様が部屋に入ると、手をついて深くお辞儀した。
「いえ、お館様のお申し付けとならば何時でも…。」
柱合裁判が終わったあと、お館様に夜もう一度来て貰えないかとお願いされた。
「今回の任務、見事だったね。
無事、問題を起こしていた子達を捕まえることができた。
ありがとう。」
「ありがとうございます。お褒め頂き嬉しい限りです。」
嬉しくなり、深々と頭を下げた。
「今回は、現場に宇髄と胡蝶もきて私の手伝いをしてくれました。
おかげで藤の花の家に住む女性を守ることができました。」
「杏寿郎が好いたという女性だね。何か進展はあったかな?」
ボンボリの灯りがゆらっと揺れる。
「はい、彼女とお付き合いすることができました。お館様の助言のおかげです。」
「ふふ、それは良かったね。」
お館様は嬉しそうに笑うと、優しい眼差しを向けた。
「杏寿郎がそれだけ魅力的だからだね。
出会って日が浅くとも強く惹かれることがある。
藤の花の女性とうまく行くことを願っているよ。」
ありがとうございますともう一度頭を下げた。
「杏寿郎。」
お館様が優しく静やかに言った。
「はい。」
頭をあげると、お館様が微笑んでいる。
「人の運命というのは不思議だね、神様が決めたものなのかな。
宿命か運命か、私はいつも君を信じているよ、杏寿郎。」
そう話すお館様の表情は、どこか笑っているようにも、悲しんでいるようにも見える。
何か感じているものがお館様にはあるのだろう。それが何かまではわからない。
ただ、お館様の信じているという言葉に、力が漲った。
「はい!ありがとうございます!」
フフっとお館様は微笑むと、
「鬼の新しい情報が入った。杏寿郎、行ってくれるかい?」
「御意!」
春の白い満月が、暖かな空気で霞んで見えた。
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favo(プロフ) - にこさん» にこ様、最初から最後まで応援していただきありがとうございました☆そう言って頂けて私も嬉しいです(*´▽`*)ありがとうございます!短編集もまた書けましたらお知らせしますので、またどうぞよろしくお願いします☆ (2021年5月21日 8時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れさまでした(^^)すごくよかったです!!とにかくよかったです!!温かくて愛の溢れる作品でした★短編のほうも楽しみにお待ちしてます!これからも応援してますので頑張って下さい。新作も読ませていただきますね♪ (2021年5月20日 12時) (レス) id: 4f5310af0f (このIDを非表示/違反報告)
favo(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、最初から最後までたくさん応援してもらいありがとうございました!元気をもらい、無事完結できました笑(*´▽`*)また更新した時はどうぞよろしくお願いします☆ありがとうございました! (2021年5月17日 18時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 完結おめでとうございます!二人とも幸せで良かった(^○^)短編集も楽しみにしてます! (2021年5月17日 18時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
favo(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉様、コメントありがとうございます!本当に煉獄さんは生きていてほしいと思いました!私の中には生存ifしかありません笑(*´▽`*)新作、また読んでいただけますと嬉しいです!ありがとうございました☆ (2021年5月17日 18時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:favo(ふぁぼ) | 作成日時:2021年4月2日 0時