英霊魔導士、フィオーレを征く【第３幕】

ハルジオンの海賊船 １ ページ9

二日後の朝。港町ハルジオンにて。

海事博物館の夜間警備の仕事を請け負ったAたちは、契約していた日数の仕事を終えて海沿いの商店街を歩いていた。

｢まさか警備中に泥棒が入ってくるなんて…びっくりしちゃったよ｣

｢まぁ確かにマジで驚いたけど。返り討ちにして兵隊に引き渡したんだから、別によくない？｣

｢館長のご厚意で報酬もかなり弾んでいただけましたし、暫くは生活に困ることなど無いでしょう。あぁでも、節制は必要ですよ？マスター｣

昨晩の大捕物をまるで些事であるかのごとくしれっと語るサーヴァントたちに苦笑を零しながら、Aはその視線を海へと向ける。
太陽の光を反射して瞬くコバルトブルーの水面には、商船や客船、海賊船など大小様々な船がぷかぷかと浮かんでいた。

幾度となくレイシフトを経験し、海賊が猛威を振るっていた時代さえ｢そういうものか｣と受け入れてしまっているAにとって、その景色はいつもと変わらぬ港の風景である＿＿はずだったのだが。

｢……あれ？｣

ふいにAの足が止まった。
それに気づいた鈴鹿御前とアルジュナがAの近くまで戻り、彼女の視線の先を追う。
海賊船らしき一艘の近く。積み重なった木箱の横。
そこには、緋色の髪を海風に靡かせる女騎士の姿があった。

｢あそこにいるの、どう見てもエルザ……だよね？｣

｢海賊らしき人物と、なにやら会話をしているようですが…？｣

もしかしたら人違いかもしれないと、Aが遠くから目を凝らす。
すると女騎士は何も無い空間から剣を取り出し、目の前の海賊に切っ先を向けた。

｢…これはちょっとヤバいやつなのでは？｣

こちら側からは後姿しか見えていないものの、女騎士の放つオーラはとても平和的とは言い難い。
Aはサーヴァントたちと頷きあい、偶然そこを通りかかったかのように装って女騎士＿＿エルザに近づく。

｢え、エルザ！こんな所で何してるの？｣

｢ん？あぁ、Aたちか。偶然だな、仕事か？｣

｢博物館の夜間警備が終わって、これから帰るところ。エルザは……海賊退治？｣

Aが一瞬だけ海賊のほうに視線を移すと、彼は胸の前で両手を組み、拾われた子犬のような瞳でAを見ている。
彼の口から｢命の恩人…！｣などと聞こえるような気がするのは幻聴だと思いたい。

そんな彼の様子をよそに、エルザはきょとんとした顔でAの問いに答えた。

｢いや？退治などしていない。
私はガルナ島行きの船を探しているんだ｣

ハルジオンの海賊船 ２→←S級クエスト ６

ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーアルファベット

X

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした！

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す