月の雫、悪魔の咆哮 ３ ページ26
静謐のハサンは、中東に興った暗殺教団の教主『山の翁』を務めた歴代ハサン・サッバーハのひとりである。
その体は全て猛毒で構成されており、髪や爪、体液でさえ、他者を死に至らしめるほどの威力を持つ。
本人もそれを気にしており、カルデアにおいては特殊な耐毒性を持つAや、一部の触れることのできるサーヴァント以外とはあまり交流を持っていないようだ。
しかし、重要なのはそこではない。
｢(レイシフト時や、シミュレーターのものとは魔力の質とレベルが違う。
彼女は……『カルデアの静謐のハサン』か？)｣
彼女もまた、アルジュナや鈴鹿御前と同じように、Aの手によって聖杯転臨を受けた特別なサーヴァントなのである。
勿論、カルデアに在籍するサーヴァントが特異点や異聞帯で別の主に召喚され、使役されるのは別段珍しいことではない。
その場合は『同じ器の違う人』として扱われ、サーヴァントとして召喚に応じる度に、英霊の座に登録されている『器』を参照して、魔力の肉体が構築される。
シャドウサーヴァントもその例に漏れず、召喚されれば必ず同じ姿とある程度決まった能力を持ち、他の主との記憶や一時的に得た特殊能力は共有されないようになっている。
しかし今、アルジュナの目の前にいる彼女は、『器』そのものを聖杯という強力な魔力リソースで強化された、いわば『カルデアでしか存在し得ない静謐のハサン』。
そんな彼女が不完全な影法師となって異世界に現れ、同じくカルデアのサーヴァントであるアルジュナを襲っている。
これは異常事態以外の何物でもない。
｢(幸い、弱体無効スキルを持つ私に彼女の毒は殆ど効かない。
マスターと合流し、作戦を立てるか……ん？)｣
地に降り、少しずつAたちのいる方角へとシャドウサーヴァントを誘導しながら戦っていたアルジュナは、その身に受けている殺気がふいに消えたのを感じ取り、足を止めた。
｢(気配遮断のスキル、というわけでもない。
それどころか、存在さえ霧散している……？)｣
深い森の中とはいえ、突然ぷつりと敵の気配が無くなるのは妙である。
耳を澄ませてみても、聞こえるのは自分の息遣いと鳥の鳴き声ばかりで、呼吸音や足音などは拾えない。
｢これは、一体……｣
訝しげに周囲を見渡したアルジュナがふと空を見上げると、先程から徐々に輝きを増し始めていた紫色の月は、どこからともなく流れてきた小さな雲の群れに隠され、もどかしそうに薄明かりを地上へと投げかけていた。
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紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (9月15日 7時) (
レス) @page50 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
空思鳴(プロフ) - 暇だと思ってるマンさん» 励みになるコメントをありがとうございます。いつかやってみたいと思っていた組み合わせなので、書いていてとても楽しいです(設定の擦り合わせなどは大変ですが…)。多忙につき少しずつの更新になりますが、楽しんでいただけたら作者としても幸いです。 (2021年1月20日 3時) (レス) id: 962df50755 (このIDを非表示/違反報告)
暇だと思ってるマン(プロフ) - とても面白いです！FateとFAIRYTAILは系統が似てるのでとても合っていますね！！更新、楽しみに待っています！ (2021年1月8日 18時) (レス) id: 92ab665feb (このIDを非表示/違反報告)
空思鳴(プロフ) - りんりんさん» こんにちは。温かいコメントをありがとうございます。今後も少しずつ更新していく所存ですので、最後までお付き合いいただけると幸いです。 (2020年12月10日 20時) (レス) id: 962df50755 (このIDを非表示/違反報告)
りんりん(プロフ) - こんにちは！初見で一気に読み進めました！更新、楽しみにしてます！ (2020年12月10日 20時) (レス) id: 7fd268645f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空思鳴 | 作成日時：2020年12月9日 1時
