琥珀のお守り 3 ページ49
「なんですか、おじいさん」
扉に手をかけたままAが振り返ると、老人は右手で小さく手招きをして彼女を呼び戻した。
そして、背面の棚に隠すようにして仕舞われていた布の塊を大事そうに取り出し、カウンターの上にゴトリと置く。
「広げてみなさい」
見るからにボロボロな布切れの結び目を、老人の指示通りに丁寧に解いていくA。
無理に引っ張ると千切れてしまいそうなその布の中には、これまたボロボロな箱がひとつ。
「これ、なんの箱ですか?」
老人の促すような視線を受けて長方形の箱を手に取り、恐る恐る開けてみる。
そこには、黄金色に透き通る琥珀が鍔の中央にはめ込まれた、シンプルな造りのダガーが収められていた。
「おじいさん、これって…」
「とある南国の由緒ある短剣じゃ。嬢ちゃんに譲ろうと思ってのぅ」
「え!?」
Aは耳を疑った。
宝石や武器に関する目利きの力など皆無な彼女でも、これは明らかに上等なものだと理解できる代物である。
そんな貴重そうな品を何故…とAが疑わしげな表情を浮かべていると、何を勘違いしたのか老人は「持ち運びが不安なら、ダガーホルダーもつけてやろう」と再び背面の棚を漁り始めた。
「いや、違うんです。こんな貴重そうなもの、受け取るわけにはいきません」
困り果てるAをよそに、老人はカウンターの下から革製のベルト付きホルダーを引っ張り出し、タオルで汚れを綺麗に拭き取る。
やがて、「…これは魔導士であるワシの推測じゃが」と口を開いた。
「嬢ちゃん、ひとりだと弱いんじゃろ」
「__ッ!?」
ぶわり、と全身に鳥肌が立った。
図星だ。目の前にいるこの老人は、Aの致命的な欠点を既に見抜いている。
確かに、人類最後のマスターになる前まで凡庸な一般人であったAは、サーヴァントが居ないと殆ど何もできない非力な存在である。
どれほど護身術を学び、体力をつけたところで、一般人の範疇を超える成長は見込めない。
だからと言って、こんなあからさまな武力を自分が手にしてもいいのだろうか?
黒光りする鞘に収められた銀のダガーを見つめてAが考え込んでいると、老人は彼女の目をしっかりと見つめ、重く、しかし優しく言葉を紡いだ。
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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年8月26日 16時