戦士と雑談と警報装置 ３ ページ46
｢終わりですか？｣
息ひとつ切れていないアルジュナが蹴られた肩に付着した土を手で払いながら問うと、スティングはよろよろと立ち上がった。
｢いや、まだだ！まだやれる！！｣
所々に血の滲んだ擦り傷を作り、全身砂まみれになってもなお、彼の闘志は燃え尽きない。
何度でも立ち上がって食らいついてくるその姿に、アルジュナはかつて自分が極めようとした戦士としての在り方を垣間見たような気がした。
｢なるほど。決して諦めぬその心と瞳。幼いながらも既に誇り高き戦士の精神を会得していると見受けられます。
ならば私もひとりの戦士として、貴方の勇敢さに応えねばなるまい｣
そう言ってわざと後退し、スティングとの距離を置いたアルジュナ。
その行動の真意を掴みかねて怪訝そうな表情を浮かべていたスティングは、彼がこちらから攻撃を仕掛けるのを待っているのだと理解した途端に地面を蹴り、再び真っ直ぐ飛び出した。
｢(機動力では子供の俺が有利だ。今度は真正面、攻撃を避けてから潜り込んでカウンター＿＿！)｣
頭の中で作戦を組み立てながら、アルジュナの懐へと突進するスティング。
アルジュナもまた、彼を迎え撃とうと地面を蹴って駆け出し、正拳突きの構えを取る。
両者が互いに接触できる距離まで詰め寄り、その拳を交えさせようと腕を伸ばした瞬間。
＿＿＿＿ジリリリリリリ！！！
耳を劈く不快な警報音が辺りに響き渡った。
突然の出来事に、2人の拳はお互いの体スレスレでピタリと停止する。
｢うわなにこの音！？うるさっ！？｣
｢このサイレンは…！？｣
｢せ、線路のランプが赤く光ってますよ！ハイ！｣
雑談していた鈴鹿御前たちが耳を塞ぎながら見ている方向に、スティングとアルジュナも視線を向けた。
線路沿いに点々と設置してあった照明が、赤い光を放ってサイレンを鳴らしている。
その強烈な音量にスティングは顔を顰め、耳を塞いで蛇の如くのたうち回った。
｢ぬあぁ！至近距離だとめちゃくちゃうるせー！
なんだなんだ！？線路の異常か！？｣
｢非常警報灯とサイレン…事故か何かですかね｣
｢と、とりあえずここから避難だ！
このままじゃ俺の耳が取れちまう！｣
｢あっ、待ちなさいスティング！どこへ行くのです！？｣
｢頭が割れないくらいには安全な場所〜！｣
そう叫びながらフルール通りの方に駆けていくスティングをアルジュナが追う。
それに続いてAたちも、彼の背中を見失わないように急いで走り出した。
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作者名：空思鳴 | 作成日時：2020年8月26日 16時
