英霊魔導士、フィオーレを征く【第１幕】 (ページ42)

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書籍を解読せよ１ページ42

鈴鹿御前の完璧な見立てによって恐ろしいほどサイズが合っていた服たちを一度片付け、Aたちは本来の目的であった書籍の解読に取り掛かる。
クレープ屋の店主に報酬として要求していた書籍は、フィオーレ王国の歴史書と一般常識的な魔導書、そして国内のみが詳細に記された地図帳の3冊。
もちろんAたちにこの世界の言語の知識は備わっていないため、子供向けに分かりやすい図解が入っている辞書も人数分用意してもらっていた。

｢ほう…この国の歴史は、汎人類史の刻んだものとは大分違うようですね｣

ベランダ近くに置かれた椅子に腰掛けながら、アルジュナが歴史書の内容に興味深そうな反応を示す。

｢空気中のマナを体内魔力に変換して図形で出力、魔法陣を展開…呪文の詠唱も同時に？ふーん｣

ベッドに寝転び、雑誌を読むような感覚で魔道書を捲っていた鈴鹿御前は、何やら難しい文言をぶつぶつと呟いていた。

｢この地図記号は…えーっと、なんて読むのこれ…？｣

テーブルの上にめいっぱい地図帳を広げ、辞書とそれとの間を目線で反復横跳びしていたAがとうとう目を回し始める。
そんな彼女の疲弊を察したアルジュナは、歴史書を閉じてタオルとバスタオルをクローゼットから1枚ずつ取り出し、Aの隣に置いた。

｢…マスター。あまり根を詰めすぎては体に毒です。今日はもう、お休みになられた方がよろしいかと｣

｢でも2人が頑張ってるのに、私だけ休むのはちょっと…｣

｢なーに言ってんのマスター。私たちは不眠不休でもぶっちゃけ平気だけど、マスターは違うでしょ？休める時は休む！これ鉄則だし！｣

そう言って鈴鹿御前はAの頭の上にバス用品の入った巾着袋を乗せる。

2人に休息を勧められたAは｢ありがとう、そうするね｣と謝辞を述べつつ、タオルと巾着を受け取ってユニットバスへと向かっていった。

シャワーの水流音が僅かに部屋に届いてきた頃、アルジュナが歴史書と辞書、服の入った包みを纏めて自分の部屋へ戻る支度を始める。

｢こっち泊まってもマスターは何も言わないと思うんだけど。ジュナっちってマジ紳士〜｣

｢そうは言っても分別というものがあるでしょう。私は自室に戻って解読作業を続けます。鈴鹿、マスターを頼みましたよ｣

｢寝かしつけなら慣れてるし。んじゃ、おやすみ｣

｢おやすみなさい。貴女も無理はなさらぬように｣

｢善処する〜｣

部屋の扉が閉まったと同時に、シャワーの蛇口を捻る音が部屋に響いた。