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微睡みの中で 3 ページ27

ドシンッ!

その身が強く打ちつけられる衝撃で、Aは目を覚ました。
どうやら自分はベッドから逆さまに落ちたらしい。

「いったぁ…あれ?ここどこ?」

寝ぼけ眼を擦って周囲を見回すと、そこはホテルの一室のような場所だった。

「もしかして、2人が部屋まで運んでくれたのかな…」

そういえば昨日の仕事終わりから記憶が曖昧である。
アルバイトの契約を交わす際にサキが「住み込みで構わないよ」と言っていたことから察するに、ここはサキが所有する宿泊施設か何かなのだろう。
そんなことを考えながら、Aは先程まで見ていた不思議な夢を思い返した。

「サーヴァントから離れない、令呪は使い切らない、命に関わる怪我をしない、か…」

これをAに最初に誓わせたのは誰だったか。
まだ右も左も分からぬ『48人目の補欠』であったAが、突如として人類最後のマスターを務めることになって早数年。
今では息を吸うのと同じくらい当たり前の事と化したその誓約は、Aの意識の奥深くにきちんと刷り込まれている。

「(そうだ、これを最初に教えてくれたのは…)」

懐かしくて優しいその名前をつい口に出しかけた瞬間、入口らしき扉が勢いよく開いた。

「おっはよーマスター!ちゃんと起きてるー?
…って、何してんの?」

「いや、あの、びっくりしてつい…」

反射的に頭から布団を被って防御態勢を取っていたAに、鈴鹿御前はきょとんと首を傾げる。
そして「ま、いっか!」と軽く流し、Aが被っていた布団を勢いよく剥いだ。

「サキさんが2日間のお休みをくれたから、今日は皆で町を見に行くし!
だからマスター、爆速で支度して!」

ぐいぐいと洗面所に押し込んで強制的に洗顔させようとしてくる鈴鹿御前に、Aは「自分でできるから!」と抵抗の意思を示し、可能な限り手早く身支度を整えていく。

「こんな感じかな…お待たせ、鈴鹿ちゃん」

洗顔のために外していた手袋をはめ直しながらAがそう声をかけると、鈴鹿御前は嬉しそうに部屋の扉を開けた。
1階へと続く階段の近くでは、アルジュナがいつも通りの完璧な姿でAの到着を待っている。

「おはよう、アルジュナ」

「おはようございます、マスター
本日の天気は快晴です。観光には最適でしょう」

「せっかくの休日、1秒たりとも無駄にできないし!2人とも、早く早くー!」

鈴鹿御前に手を引かれた2人は顔を見合わせて笑みを零し、されるがままに外へと向かっていった。

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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年8月26日 16時

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