微睡みの中で 2 ページ26
__その夜、Aは夢を見た。
誰もいない教室の一番奥、真ん中の席にポツンと座っていたAは、ふとその視線を窓側に向けた。
窓の外には、グラウンドでも青空でもなく、深く暗い海底の景色がどこまでも広がっている。
「海?」
おかしな光景に少し動揺したAが窓に近づき、外の様子をもっとよく見てみようと窓枠に手をかけた瞬間。
「こんばんは」
背後から突然、自分のものではない誰かの声が聞こえた。
Aが振り返ると、そこに立っていたのは少女の形をした黒い影。
「あなたは…?」
そのシルエットと小悪魔じみた声にはどこか見覚えがあるものの、今のAは何故か思い出すことができなかった。
「ここは、どこなの?」
Aが少女の影に対し、さらに質問を重ねる。
「ここはアナタの夢の中。そして、アナタの現実の中」
「夢の中であり、現実の中…」
「そこまで深く考える必要はありません。
わたしが呼び寄せたい時だけ、アナタの夢はこの空間とリンクされるシステムなんです」
「サーヴァントとの夢の共有みたいな感じだね」
少女の影は突然Aに近づき、デコピンをひとつ残して元の場所に戻る。
「いてっ」
「核心はつかなくていいんです。少なくとも今は。
今回は、アナタに注意事項を伝えに来ました」
「注意事項って?」
額をさすりながらAは少女の影に問うた。
少女の影はどこからともなく取り出した教鞭のようなものをビシッとAに向け、言葉を発する。
「ひとつ、サーヴァントから離れないこと。
ふたつ、令呪を使い切らないこと。
みっつ、命に関わる大怪我をしないこと」
Aは素直に頷いた。
いま少女の影が挙げた注意事項は、カルデアで普段から口酸っぱく言われている事とほぼ同じものであるからだ。
少女の影はAの従順な様子を見て、満足そうに鼻を鳴らす。
「……いいでしょう。心得ているなら結構です。では、元の場所に強制送還しますね?」
巧みに教鞭を操り、空中にハートの模様を描きだす少女の影。
それに呼応するかのように、Aの足元に桜の形の穴が出現した。
「うぇ!?」
一瞬の浮遊感の後、重力に従って下へ下へと落ちていくA。
「ま、この注意事項を守るか守らないかはアナタ次第ですが。
せいぜい死なないように頑張ってくださいね?セーンパイ♡」
穴の入口を覗き込んで絶叫と共に遠ざかっていく彼女の様子を見ていた少女の影は、最後にAに聞こえるようにそう叫んだ。
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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年8月26日 16時