英霊魔導士 5 ページ24
その日の夜。
「い、いらっしゃいませー!」
「ようこそー!空いてる席にどうぞだし!」
青いエプロンを身につけたAと鈴鹿御前が、お盆に乗せた料理を忙しなく運びつつ酒場に入ってきた青年たちに笑顔で応対する。
「お待たせいたしました。当店特製の赤ワインでございます」
バーテンダーの服に身を包んだアルジュナは、カウンターで酒類のオーダーをこなしながら、彼の整った容姿に食いついて離れない女性たちの相手をしていた。
その様子を満足そうに眺めていたサキに、酔った常連客たちが酒瓶を抱いたまま話しかける。
一問一答、キャッチボールのように交わされる常連客たちとの会話も、長らく店を乗っ取られていたサキにとっては、久しぶりに取り戻せた貴重な日常であった。
「サキちゃんやるねぇ、こんなに働き者で見た目もいい子たち、いくら積んで雇ったのさ?」
「バカなこと言うんじゃないよ。
強いて言うなら、利害の一致ってヤツさ」
「俺は知ってるぜ。あのバーテン、昨日ゴロツキ連中をぶっ飛ばした黒髪の兄ちゃんだろ?
あっちの獣耳の嬢ちゃんも、鎮圧に手ぇ貸してたって噂だ」
「ホント耳が早いねぇ、アンタたち…」
「魔導士の爺さんが町中に触れ回ってたぜ。『あの若者たちはワシがドーリスに導いたんじゃ』って。
爺さんは外国からの観光客だって言ってたが、本当のところはどうなんだ?」
「異国出身の観光客ってのはホントだよ。ただとんでもない強さの魔導士だったってだけ。
ほら、あそこにいる橙髪のお嬢ちゃん。あの子が『英霊』ってのを使う召喚魔導士なのさ」
「はぁ、あの平凡そうな女の子がかい?
どうもそんな強そうには見えねぇが…」
「ところがだ。ゴロツキ連中を懲らしめたあっちの2人、あのお嬢ちゃんが召喚して従えてるんだとさ」
「マジかい!?ひぇー!人は見た目によらねぇなぁ、あっはっは!」
「…ちょっとアンタ。いくら久しぶりのマトモな営業とはいえ、酔い潰れるのはやめとくれよ?
店で寝ちまったって、もう家まで送ってやらないからね」
Aたちが客の応対に追われている間、酒場の女主人と噂好きの客たちの間にそんな遣り取りがあったことなど、忙しなく働いていた彼女たちが知るはずもなく。
久しぶりに通常営業を行ったドーリス最大の酒場はその日、過去最高売り上げの3倍の数値を叩き出したという。
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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年8月26日 16時