第十九話 ページ22
「うん、さっき君が心のダメージを受けていたときに国木田と考えたんだ」
「へ、へえ」
田山は戸惑いながら適当な相槌を打った後こちらを見てくる。
言わんとすることはわかるよ、『もうちょっと良いのがあっただろ』って言いたいんでしょ。
だからってこっち見ないで、僕じゃ解決できないんだから。というか、僕自身彼らと同じようあだ名をつけていたし。
とりあえず彼を目線で『まあまあ』と宥めておきつつ、『菱田春草』の名を頭の中で反芻する。それにしても懐かしい名前を聞いたものだ。
「ねえ、続けていい?」
すると赤毛鏡花…もう赤毛の君で行こう、赤毛の君が島崎にそう聞いた。島崎は『構わないよ。止めてごめんね』と軽く謝った。
「うん。それじゃあ…、そうだな。芽衣…女性の知り合いがいるんだけど、その人のことを彼は『子リスちゃん』って呼ぶんだ」
彼がそう言った瞬間、全員が全員森さんの方を向く。
「何だい鴎外くん、もしや司書さんのことも『子リスちゃん』と呼んでいるのかな?」
笑いを堪えて坪内さんが森さんに聞く。
「そんなわけがないだろう!?さっきも言ったが、それは赤毛君の『森鴎外』の話だ!坪内殿、貴殿は俺を普段どんな目で見ているんだ!?」
声を上げる森さんに『ふっ、またすまないね、くくっ』と言うと。我慢できなくなったらしい、座っている椅子の背凭れを叩いて笑い出した。
多分、森さんが『子リスちゃん』と言っているのを想像でもしたのだろう。
…正直僕も想像した。脳裡にベ○ばら並に目がキラキラした森さんが、『子リスちゃん』と呼んでいる姿しか出てこなくてちょっとアウトだった。
「そういや、司書に『王様ゲーム』というものを教えてもらったんだ。負けた罰には鴎外、お前には是非とも『子リスちゃん』と言ってもらおうか」
露伴先生の提案に師匠が『ほう、なかなかに面白そうではないか』と乗る。
「おい、露伴!?尾崎殿!?」
ノリノリの二人に手をつけられない森さんを見るのは中々新鮮だ。
ほとほと困り果てた森さんは自身を尊敬してくれている田山のことをじーっと見つめる。
その目線に気づいた田山は彼の目を見つめ返してにこりと笑った。
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あにまるせらぴー(*´∀`)(プロフ) - 続き楽しみです!頑張ってください!(*´`) (2021年7月9日 0時) (レス) id: 99283ce527 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:皓月@司書兼指揮官 | 作成日時:2018年8月17日 18時