第一話 ページ1
「はあ…、疲れた」
二階の書架の整理を終え、仕事の交代のためにやっとこさ受付に戻った僕・徳田秋声を久米さんが迎えてくれた。
「お疲れ様です、徳田先生」
彼とは生前、社交ダンスの会で一緒だったり、秋声後援会の会員だったから色々と関わりがあった。
「うん、ありがとう。久米さん」
『そっちの方は大丈夫?』と労いの言葉に礼を述べながら様子を伺う。
「はい、こちらは大丈夫でした」
『最初は気を張っていましたが、何とかなるものですね』と笑う彼。彼はまだこの図書館に来て日も浅いし、生前も図書館で働くことはなかっただろう。
…まあ、こんなことを言っている僕もないのだけれども。
「それは良かったよ。さて、そろそろ慣れてきたそんな君にとてつもなく厳しいという新たな仕事をつけよう」
「えっ!」
僕がからかうように言うと彼は驚いた顔をした。
「冗談だよ」
くすりと笑うと、『で、ですよね。良かった…』と彼は安堵した表情を見せた。
「今からやってもらうのは一階の書架の整理。僕はついさっきまで二階の書架の整理をやっていたわけなんだけど、二階と違って一階は文庫本やライトノベル、児童向けの絵本や児童文庫だからまだ整理はしやすいはずだよ」
そう、先程まで僕が整理していた二階の書架は沢山のハードカバーの書物ばかりである。
日頃から弓を引き、その為の体力作りをしているとは言え中々に厳しい。
「と言っても一人だけじゃあ不安だろうし、菊池さんも付けているから」
仕事内容の説明で少々不安そうな顔をした彼にそう付け加えると、『寛もいるんですか』と表情がぱっと明るくなった。
もともと菊池さんは今日、図書館の担当ではなかったのだが僕が頼み込んだ。
そんな頼みに彼は快く承諾してくれて今に至る。
「うん、そういうわけだから頑張って」
『菊池さんは司書室にいるよ』と、僕が声を掛けると『は、はい』と久米さんはまだ少し緊張した面持ちで受付の席を立った。
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あにまるせらぴー(*´∀`)(プロフ) - 続き楽しみです!頑張ってください!(*´`) (2021年7月9日 0時) (レス) id: 99283ce527 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:皓月@司書兼指揮官 | 作成日時:2018年8月17日 18時