兆しはなく 2 ページ10
オリヴィエの策は至極簡単なものだった。
自分がキャスターとして活動し、かつキャスターはマスターとして活動する。
その為オリヴィエはサーヴァントとしてサーヴァントと戦闘をし、キャスターはマスターとして指示のみをする。
それによりオリヴィエがサーヴァントだと誤認させる。
最弱のキャスタークラスを召喚したこと、そして完成された魔術師でありサーヴァント相手に防戦であろうと渡り合えることが前提条件となり成立する、頭のおかしい策だ。
「真っ当な策だと、正気だと胸を張って言えることかな?」
「いや全く」
「サーヴァントと戦闘できるのかな?」
「いや全く」
「そもそも通じると思ってるのかな?」
「いや全く…じゃない、流石に通じる可能性のない策は提案しない。
要因は幾つかある。更に言ってしまえばお前ほどのキャスターの触媒になれるほどには誤認は可能な筈だ、うん。
…どうだ?」
敗因となるキャスターが確信に至ることを告げ、自信ありげに自分で頷く。
それは自己肯定でもしていないとやってられないというような気持ちでもあり、半ば諦めていることも察せられる。
オリヴィエはポロポロと詭弁を溢しキャスターと視線を合わせない。
愚策上等、当たって砕けてしまえばそれまでの身。
それが人類という織物における裁ち鋏だとキャスターは理解し、美形を歪めることなく一笑した。
「沈黙とその笑みは肯定と見なす。…あとキャスター、その格好は浮くから着替えてくれ。全身がまさに過去の人間って感じだ」
これ以上のことは無駄と察し論点をずらして話を繋ぐ。
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作者名:菫青 | 作成日時:2019年8月26日 22時