はじまり 4 ページ5
如月幸太は一般人でありながら、凡庸ではなかった。
頭が良くはないが、生きようとするずる賢さと後悔の才能のみは抜きん出て高かった。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
「―――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
…汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よっ!」
手に持った紙に書かれた呪文を唱えながら魔方陣を見据え、触媒として利用した本を確認する。
暫くして、如月は顔をあげた。
「私を喚んだのは君だね?サーヴァント・ランサー。真価は発揮できないにしろ、やることはやろうじゃないか」
自らの勝利を確信し、期待の意を込めランサーの瞳を真摯に見つめた。
ランサーはその視線をしっかりと受け止め、好意的に頷く。
実に素晴らしい人間だとする目をしておきながら、どこか品定めするように。
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作者名:菫青 | 作成日時:2019年8月26日 22時