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崩れ落ちた火蓋 17 ページ39

雨が若干弱まり、薄い雲に阻まれた月明かりが淡くも灰色に濁った光が浮く。

行動に依存するものの日が沈むのは予想よりも遥かに早いもので、特に深く考え事をしている場合は三倍、四倍も速く体内時計の針は進んでいく。

「…ん?」

如月は起き上がってから自前の手帳に繋ぎ繋ぎでミミズが這ったように書かれた字を眺め、視線を移動して時計を眺める。

針はおおよそ午後7時を指しており、針は今も時を刻んでいる。

部屋も暗く、起き上がった瞬間に何かの落ちる音がした。

「あれ、毛布なんか掛けてたっけ」

ずり落ちた地味な毛布を拾って畳み、机の上に置いたところで疑問を口にする。

「雨も止んでる…あ違う、止んではいないか」

しかしあまり気にせず無音が広がる窓を見て呟く。

「うわぁ、これは酷い」

それから下を見ては自分の書いた下手を極めたような字が見つかり落胆する。

元々如月は字は下手であり、瞬時に読めるほどではないがそこまで酷い字でもなかった。

しかし眼前にあるのは書いた本人でさえも読めない字であり、形容しがたい違和感まで与えさせる。

「確かに酷い字だね。でもまあ、これはこれで味があるとかはないのかな」

どこからか出てきたランサーが見てからフォローしようとする。

うんうんと笑顔で頷いているもののそれは何処かひきつっており、フォローするよりかは貶す意味合いにもとれてしまう。

「ほんっと、読めないものに味があるんだったら僕のは世界一を誇れそうだよ」

自嘲気味に笑い、改めて三度目の観察をしてはまた呆れる。

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作者名:菫青 | 作成日時:2019年8月26日 22時

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