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「おっ、いらっしゃい」
『鱈を6切れと〜、イワシはう〜ん…12匹!』
「890円だよ…って、おい嬢ちゃん、手ェ大丈夫か?」
『お豆腐が重くてー。まあ大丈夫、ありがとうお兄さん』
この魚屋のバイトのお兄さんはすごく気さくで、よくこうして話しかけてくれる。この魚屋さんにはよくお世話になるので、いつの間にか仲良くなっていた。お兄さんはすごく端整な顔立ちなんだけど、どこか野性的で、やんちゃそう。あとなんか犬みたい。
そんなお兄さんにお金を支払う時、いや、大丈夫じゃねーだろこれ…と手を取られる。
確かに重いビニール袋が食い込む指の節々は赤くなっていて、ひりひりと痛む。
『え〜?大丈夫だってば』
「この手で魚さばいて水仕事するんだろ?」
むむむ、と唸るお兄さんだけど、こればかりはしょうがない。さてお魚も受け取ったし、また気合を入れ直して…。
「よっしゃ!俺が家までその重てえの運んでやるよ。おやっさーん、店番ちょいとサボるなー!」
『えっ、え!?そんな悪いですよ、いいのに』
「んいーや、ちょいとこれは黙っておけねえなぁ。嬢ちゃんせっかく可愛いんだからよ、自分のこともっと大事にしな」
突然可愛いと褒められ、恥ずかしくなってまたマフラーに顔を鼻くらいまで埋める。
家どっち?と訪ねてくるお兄さん。
『…こっち』
「よーし、行くか」
既に日は傾いていて、中学生の弟も、部活を終えてお腹をすかせて家に着いている頃だ。食べ盛りかつ野球部なんて入るものだから何を作ってもバクバク食べてしまう胃袋ブラックホール野郎である。
そんな話をしながらお兄さんと家路を歩く。…ちょっと変な感じ。
「そーかそーか、弟が4人も居ればそりゃそーだわな。」
『食費切り詰めるのが大変でね…。私今からこんな主婦じみたことしかしてないからモテないのが辛いよ〜あ、家この坂上。もういいよ、お兄さん。』
「や、最後まで持っていくって。またあんな手になっちゃいけねえからな」
それと、と付け足して。
「さっきも言ったが、嬢ちゃんは美人だと思うぞー?モテないこともねーだろーに」
さらっと真顔で言われると、恥ずかしいことこの上ない。
『そ、そんなに褒めても缶コーヒーくらいしか出ないよ!?』
「だはは、報酬はあんのな」
その後家でその様子を見ていたちび共に、
「ねえねえあれねーちゃんのカレシ!?カレシなの!?」
とうるさく言及されて、私が初めてお兄さんのことを意識してしまうのは、また別の話。
フォルヴェッジ家の末っ子 フォルヴェッジ姉弟(※非恋愛、家族愛)→←やさしいバイトのお兄さん(犬) クー・フーリン
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菜穂 - ロシェの双子妹設定でお願いします (2018年6月1日 18時) (レス) id: 7818562d23 (このIDを非表示/違反報告)
菜穂 - リクエストでロシェの双子の妹とアヴィケブロンとロシェのお話お願いします (2018年6月1日 18時) (レス) id: 7818562d23 (このIDを非表示/違反報告)
七人の小人たち(プロフ) - 鈴々さん» コメントありがとうございます!励みになります(^^) (2018年1月14日 20時) (レス) id: f1c39b5493 (このIDを非表示/違反報告)
鈴々 - あの、モーさんのお話すごい良かったです!とても感動しました!これからも更新頑張って下さい! (2018年1月14日 17時) (レス) id: 7035b4d7f6 (このIDを非表示/違反報告)
七人の小人たち(プロフ) - ご意見ご感想はこちらにお願いします。荒らし行為等はご遠慮下さい。 (2018年1月3日 22時) (レス) id: f1c39b5493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マスター | 作成日時:2018年1月3日 19時