【短編集】この世界で、君と【Fateシリーズ】

やさしいバイトのお兄さん(犬) クー・フーリン ページ8

突然だけど、私の家族構成を紹介しましょう。
まず母。父は諸事情があっていません。そして中学生の弟が一人、妹が2人。小学生の弟は３人。計八人家族。

母は7人の子供を養うためにパートの掛け持ちで朝早くに家を出て夜遅くに帰ってくる毎日。

となれば、炊事や洗濯、掃除といった家事は兄弟で分担するものの、やはり長女で高校生である私は一番忙しくしなければならない。ちなみに炊事は毎日私が何とかしている。

今日は午前中に学校が終わったので、夕方まで酒屋コペンハーゲンでバイトをして、特別に日払いにしもらっている給料を片手に、マウント深山商店街をすたすたと歩く。

ヒュオーっと冷たい風が吹いて、思わずマフラーにぐりぐりと顔を埋める。
学校でにらめっこしたスーパーの特売チラシを取り出して、再度にらめっこ。そうだそうだ、今日は白菜が安いんだった。ふんふん、こう寒い日に白菜といえば鍋一択。ちび共もこれなら文句言わないでしょう！

早速スーパーに入って、カゴに白菜と生姜を投入。確か味噌はまだあったから大丈夫。出汁は…そうそう、バイト先が一緒の同級生、衛宮くんに教えてもらったやり方で作った昆布出汁、作り置きしてたっけ。ならあとはきのこ類と豆腐、水菜も忘れちゃいけないかな。さて、鍋といえばお魚！安上がりを見越してお魚コーナーへ。…しかし。

『な…よりによってイワシも鱈も今日高いじゃん……』

いつもの三割増くらいの値段にショックを受けつつ、お給料と相談したものの断念。でもまだ希望はある。なんたってこのマウント深山商店街には一件とある魚屋さんがあるのだから。

レジでお会計を済ませ、袋に詰める。

うーん、お豆腐を8人分となると、半端なく重い。ついでに醤油とみりんが足りないのを思い出してお得用のそれを買ったので指が千切れそうだ。

いやいや、家にはお腹を空かせたちび共が待ってるんだ。長女あなたよ、弱音は言っていられない。

そう自分に言い聞かせて、家と反対方向の魚屋さんへ向かった。

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