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戦闘が終わって、令呪を使って消滅した3人を呼び戻そうとしていた時。
「マスター、少しだけ話がある。」
『ジークフリート…うん、なに?』
私と彼とでは、大きな身長差がある。
彼は私の顔を覗き込むように座り込む。
まるで、騎士が姫にするみたいに。
「貴方が、途方もない責任感に押しつぶされていることを苦しくなるほど痛感した。マスター」
ぎこちなく、令呪の宿った手をとられる。
「もっと早くからこうしていれば良かったのだろうが…俺は、人の心を読んだりすることは昔から苦手で。こうして遅くなってしまって、本当にすまない」
『な、にがいいたいの、ジークフリート』
ちょっと強がって見せたが、少しでも優しくされたことに対して、双眼から涙がぼとぼとと零れていく。
「苦しかったろう。人々の期待に応えることは大切なことだが、それは自分を滅ぼさない程度に留めて置かなければ、生前の俺のようになってしまう。あなた、それだけは駄目だ。」
『う、うう…』
「だから、あなた。俺が、貴方を支えよう。これからもっと苦しい戦いが待っているだろうし、もっと辛い出来事にも出くわすのだろう。だが…」
溢れた涙を、鎧を解いた手が優しい手つきで拭う。
その手はあなたの後頭部へ周り、優しく撫でる。もう止まらなかった。涙も嗚咽も。それどころか、大声で泣いた。小さな子供みたいにぐしゃぐしゃに顔を歪めて。
「それでいい。どうか俺を頼ってくれ。」
『ジークフリート…私、こわかった、』
「うん」
『私なんかじゃ、絶対無理だもん、人類皆の命が、私にかかってるなんて、そんなの』
「ああ、無理もない。」
『でも、やらなきゃいけない、私以外、出来ないなら、やるしかないの、』
ぼろぼろと溢れる本音に、ジークフリートは頭を撫で続けてくれる。
それはあなたが泣きやみ、嗚咽が収まるまで続いた。
『…ジーク、フリート』
「…なんだ、マスター?」
『ありがとう、私、頑張るから』
泣き腫らした顔で笑うあなたを、ジークフリートは、とても綺麗だと感じた。
「…ああ。そして、貴方のそばにはいつでも俺がいることを、忘れないで欲しい」
『うん。私、弱虫だからまたすぐ泣きついちゃうかもしれないけど』
へらりと笑って見せれば、ジークフリートも微笑み返す。
「それでいい、マスター、貴方は優しい人だ。」
『うん…ありがとう、ジークフリート。』
そう笑うあなたの表情には、未来への憂いを感じさせない、確かな希望が満ちていた。
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菜穂 - ロシェの双子妹設定でお願いします (2018年6月1日 18時) (レス) id: 7818562d23 (このIDを非表示/違反報告)
菜穂 - リクエストでロシェの双子の妹とアヴィケブロンとロシェのお話お願いします (2018年6月1日 18時) (レス) id: 7818562d23 (このIDを非表示/違反報告)
七人の小人たち(プロフ) - 鈴々さん» コメントありがとうございます!励みになります(^^) (2018年1月14日 20時) (レス) id: f1c39b5493 (このIDを非表示/違反報告)
鈴々 - あの、モーさんのお話すごい良かったです!とても感動しました!これからも更新頑張って下さい! (2018年1月14日 17時) (レス) id: 7035b4d7f6 (このIDを非表示/違反報告)
七人の小人たち(プロフ) - ご意見ご感想はこちらにお願いします。荒らし行為等はご遠慮下さい。 (2018年1月3日 22時) (レス) id: f1c39b5493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マスター | 作成日時:2018年1月3日 19時