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参謀は眠れない ページ3

太宰side


「君が私を訪ねるなんて、珍しいじゃないかい」



覇気のない平坦な声でそういうのは、部屋の主たる幸田Aだ

いつもの整然とした佇まいはどこへやら、椅子に座るAは机に肘を置き、頭を抑えていた

机の上には空になったエナジードリンクの缶が並んでいる




太宰「2週間もの間、首領(もりさん)からの招集を無視している自覚はあるかい?」



そう質問すると、Aはゆっくりと視線を向けてきた

表情は変わらない

いつものように無を体現したかのような顔をしている

だが、瞼をあげるので精いっぱいなのかいつもより目付きが悪かった




A「遂に私もお役御免かな。君が殺してくれるのかい?」


太宰「まさか。森さんはまだまだ参謀に期待を寄せているよ」



だから私をよこしたのだ。と伝えるとAは1つため息をついた


幸田Aは優秀な参謀だ

数多の作戦を立てたが、彼女の作戦で味方が死んだのはたった一度だけ

人を減らすことなく目的を達成できるのだから、手放されるわけがない

それはA自身も心得ているはずである




太宰「今度は誰が死んだのだい?」


A「一丁前に心配か?クソ餓鬼」


太宰「大して歳は変わらないじゃないか」




20歳と18歳、そこに大きな違いはない

にも関わらず、事あるごとに餓鬼呼ばわりしてくるAにほとほと呆れを感じる

再度同じ質問を投げかけると、視線を伏せたAが口を開いた




A「名も知らない…この街の一般市民だよ。それも一人や二人じゃない…」


太宰「そのせいで眠れなくなっていたのか」


A「瞼を閉じれば絶え間なく死に様が繰り返されるんだ。君にはわかるまい」




祈るように両手を組んだA

この姿を直属の部下が見たらどう思うのだろう

任務前も任務中も、目の前で敵が倒れようと眉1つ動かさない参謀が、恐怖のあまりエナジードリンクで眠気を誤魔化していると知れば…




A「太宰、直近の任務は?」


太宰「明日」


A「それは中原も一緒か?」




Aの質問に否定をすると、Aは「それじゃない」だの「場所が悪い」だの呟き出した

言いたいことはわかった




太宰「巻き込まれて死ぬのかい?」


A「死にはしない。重傷を負うだけだ。組織としては負債だ」


太宰「なるほど。参謀さまがそう言うなら心得ておこう」




的外れなことを言わないのはよく知っている―――

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琥珀恋歌(プロフ) - え、更新停止ですか!?すっごく面白いんですけど!!えぇー、残念です。また、時期が空いてでも更新してくだされば嬉しいです! (2021年9月12日 22時) (レス) id: 7cd883aad7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エバ。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年7月3日 0時

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