先見の参謀【文スト】 (ページ12)

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参謀は予期するページ12

Aside

太宰くん。

幾年ぶりか、目の前の男性をそう呼ぶと彼はどこか安心したように微笑んだ

太宰くんは、美形だ

座っているだけでも絵になるし、こうやって相対して微笑めば大概の女性は彼の虜になるだろう

将来、誰彼構わずに女性に声をかけそうだ

それを想像すると何だか笑えてしまう

太宰｢何か面白いことでも？｣

A｢太宰くんの将来を予想してみてた｣

太宰｢将来ねぇ…そうだ。1つ聞いてもいいかい？｣

A｢1つじゃなくてもいいよ｣

答えられる内容なら幾つでも。と言うと、太宰くんは目を伏せて口許を緩めた

太宰｢1つでいいんだ。私が知りたいのはコレだけだから｣

A｢そっか。それじゃあ保留にしておくね｣

ニコリと笑うと太宰くんは頷く

そして、切り替えるように葡萄酒を飲んだ

太宰｢私は死ねるかい？｣

A｢死ねるよ。だって君は人間じゃないかい。生き物である以上、死とは平等に訪れるものだよ｣

コレが太宰くんの求めた回答でないことは分かっている

そんなことを聞きたいのではないことも、十分に承知している

それでも…それ以外の死を思い出したくなかった

太宰くんはそれを分かっているだろうに、私の名前を静かな声で呼んだ

嗚呼、意地悪だ

A｢…首領になればいい。首領になって、中也を傍におき、この街を見下ろせばいい。世界の仕組みを知った君は、死を選ぶよ｣

太宰｢…それは、これからのことかい｣

A｢いや、数多ある可能性の1つだったものだよ｣

もう目にすることの無い、未来の光景を伝えてやった

精一杯の抵抗だ

太宰くんの死を夢に見ることは、多々あった

ある時は銃撃戦の中で射抜かれ、またある時は路地裏でグサリ、と…

でも、そのどれもが実現したことはなかった

笑ってしまうようなドジな怪我はする癖に、生命に関わることだけは回避していた

だから今の私は、昔よりもそのことに対して気が滅入ることはない

太宰くんだけは特別だ…

A｢1つ予想するね。太宰くんはきっと、自分のために死ぬことはできないよ｣

太宰｢ならば私はどうすれば死ねる？｣

A｢太宰くんは、自分以外の何かを守るためになら、死ねるよ｣

絶対にそうだよ。と伝えると、彼は揶揄うように笑った