使者の調べ (ページ2)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:7,166 hit

プロローグ　─深い森の中で─　☆ ページ2

右も左も、前も後ろも、木と草だけが広がっていた。

美しい花などはどこにも咲いておらず、ただがさがさという獣の気配だけが辺りに響いている。

鬱蒼と生い茂る葉に日差しは隠され、今が昼なのか夜なのかすらもわからない。

いったい、もう何日歩いてきたのだろう。

背丈ほどもある草をかき分け、鋭い枝に肌を引き裂かれながらも、ただ一筋の光だけを求めてここまで進んできた。

しかし、見つけたものは闇に沈んだ絶望と諦めだけ。

足は鉛のように重たくぶらさがり、引きずることさえも、もはやままならなくなっていた。

「これで···終わりかな」

ごろりと地面に横たわり、そっと瞳を閉じた。

昔のあたたかな思い出が、映画のように蘇ってくる。

どのシーンを切り取っても、満面の笑みを浮かべた、仲間の姿が映っていた。

「もう一度でいい、みんなに、会いたい···」

のどはからからだというのに、目から水滴が溢れ出た。

思い出に浸かりながら、私は静かに眠りについた。

どのくらい経っただろうか。

ふと、遠くから足音が聞こえた。

現実なのか幻想なのかもわからない。

しかし、もう目を開き確かめる気力など、どこにもなかった。

抵抗するまでもなく、私はまた深い深い眠りに落ちていった。