少年少女エクスピエート【劣等少女３章】

8. 休憩 ページ8

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　記念祭は滞りなく進んでいた。初日は国王が城の大広間とバルコニーでそれぞれ演説をする。国民が王の演説を聞きに行こうと、その時間は王宮に人が押し寄せた。街では一時的に客が減り、彼らは束の間の休憩を取る。

「僕、直接王様を見たことないんだ。絵画でしか見たことない。どんな演説をするのかな」

　静かになった店内でネストレが呟くように言った。Aはネストレの方を見て答える。

「私も直接は見たことない。――そうだわ！ 明日のパレード見に行かない？ カリーナも、三人で行きましょ！」

　パレードの時間も演説と同じように客がいなくなる。王都を一周するパレードは演説よりも時間がかかるのでゆっくりできる。そして、パレードには国王も参加するのだ。王の威光を示すため豪勢な衣装に身を包み、煌びやかな装飾の馬車に乗って王都を廻る。その馬車には壁が無く、王の姿をよく見ることができるのだ。

「いいね、僕行きたい！」
「ウチはやめておく。人混み苦手で……」
「そっか、じゃあネストレ、一緒に行こう。カリーナも気が変わったら教えてね」
「そうする」

　パレードが楽しみなのか、ネストレは嬉しそうに鼻歌を歌いながら仕事を再開した。彼の動作は軽やかになり、そのまま明日を迎えにでも行きそうな様子だった。

　ユリウスやAも仕事に取りかかり始める。そろそろ演説が終わる頃だ。



　その日の夜、未だにネストレは楽しそうにしている。明日への楽しみが募って興奮状態になり、眠れないようだ。彼が温かいミルクを淹れに行こうとランプを持って部屋を出ると、ちょうどAも部屋から出てきたところであった。

「Aも下行くの？」
「うん、水差しの水がなくなったから。ネストレは？」
「僕はミルクがほしくて」

　二人は言葉を交わしながら階段を下りる。そうしているうちに一階の店に着いた。それぞれが自分の用事にとりかかる。

「Aは住み込みだけど僕たちと違って短期じゃないよね。もしかして、家の事情？」

　薄暗い静寂を破ったのはネストレであった。Aは軽く笑って曖昧な答えを述べる。

「そうでもあるし、……そうでもないし。家の事情っていうよりは私の事情、かな」
「……そうなんだ」

　的を射ない答えにネストレは考え込んだ様子で言葉を返した。

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