少年少女エクスピエート【劣等少女３章】

6. 仮面 ページ6

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　予定よりも長めの休憩時間をもらったヴィオルドは一人で祭りの中を歩いている。露店や大道芸で賑わう城下街の空気を味わいながら陽歌(ヒラルス・カヌトス)へ足を向けていた。少し寄る時間ならあるだろう。
　紙吹雪が舞う大通りを普段よりも華やかな衣装に身を包んだ人々が行き交っている。ヴィオルドの前からは羽根つき帽子を被った仮面の青年が歩いてきていた。仮装をしている人は少なくないのでヴィオルドは特に気に止める様子もなく過ぎ去る。

　しかし、その青年はすれ違い様にヴィオルドに向けて囁いた。

「明けない夜が、再び世界を闇で覆う」

　気づいてから振り返ったときには遅かった。仮面の青年は人混みに姿を消していて、そこには最初から青年などいなかったかのような光景が広がっていた。

　“明けない夜”とは恐らく明けぬ夜(ポラル・ノクシア)のことだろう。だが、それは滅んだはずだ。なぜ今になってその存在が出てくるのだろうか。そしてあの男はなぜヴィオルドが明けぬ夜(ポラル・ノクシア)の関係者だと知っているのだろうか。嫌な予感がする。

「Aに、知らせよう」

　Aを危険に晒したくないとは思ったが、彼女のことだ、隠したところで自分から飛び込んでくるに決まっている。そしてAはきっとこう言うんだ。「私がいるのに一人で悩むなんて、バッカじゃないの」って。
　その様子を簡単に想像できてしまう自分にヴィオルドは軽く吹き出した。さっきまでの不安も、Aのことを考えていたら軽くなってしまった。

「一人じゃないってのも、悪くないな」

　納得したように小さく呟いたヴィオルドは陽歌(ヒラルス・カヌトス)への足を速めた。そこに行けば、Aがいる。

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