検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:6,661 hit

25. 再会 ページ25

.


「そんな……それじゃあ、本当のカロリーナの姿は……」

「きっと見るに耐えないだろうな」

 Aは平然と言うモルティウスに言葉を失う。

「さて、私は死者達の調子を見てくるよ。君はここで待ちたまえ」

 ひとしきり話して満足したのか、彼は部屋から出ていった。

 冷たく薄暗い部屋に一人。逃げるなら今がチャンスだが、魔法を封じる手枷のせいで自由に動けない。

 借りに出口を見つけても、すぐに追いつかれて囲まれてしまうだろう。何か手立てを考えなくては。






 Aの魔法で運ばれたヴィオルドは気を失っていた。風の魔法は人通りのある街まで運ぶと、仰向けにふわりとゆっくり着地した。

 それに気づいた青年は出血しているヴィオルドを見て声を上げる。

「大丈夫ですか! 誰か、この人を部屋の中に運んでください! そこの貴方、すぐに医者を呼んでください!」

 青年――エルファ商会の跡取り息子の声で周りの人々はヴィオルドを商会の建物内へ運ぶ。
 奥の部屋にある簡易ベッドに寝かせると、町医者が息を切らせながらノックと共に入ってきた。

「酷い怪我をしています。助かりますか?」

「傷が深い……。すぐに止血と消毒しなければ。今ならまだ、命を落とすほどではない。あと30分遅ければ、命は危なかったかもしれない」

「お願いします!」

 二度と会えないと思っていた、かつての友を救うため、エルファ商会のアルベールは医者に跪いた。

 アルベールの父はエルファ商会で成功を納めていた。その息子であるアルベールは次期会長。
 かつての貧乏貴族は今や町一番の資産家になり、働くことを馬鹿にしていた貴族達を見返していた。

 しかし、夢を語っても笑わずに尊敬の眼差しを送ってくれた友には報告できず仕舞いだった。
 確かにヴィオルドは悪い組織の子供だったかもしれない。ヴィオルドの家を見つけたあの日は驚きと恐怖だった。

 けれども、貴族であるアルベール達が働くことを蔑まなかったのだ。明るい光を見るようにアルベールを見てくれた。
 だからこそ、お互いの身分なんて関係なく仲良くしていきたかった。

 なのに。
 ヴィオルドはそれから会いに来ることはなかった。勇気を振り絞って彼の家へ行ったら、死体しかなかった。恐ろしくてすぐに逃げ帰ってしまったため、ヴィオルドの死体がないことに気づかなかった。

26. 傷口→←24. 思惑



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.7/10 (26 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
37人がお気に入り
設定タグ:ファンタジー , オリジナル , 市販書き   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

花宮 夢@低浮上(プロフ) - La merさん» お返事が遅くなってごめんなさい。読んで通知が消えた後、お恥ずかしながら忘れてしまいました。寒いので体調にはお気をつけくださいね。忙しい中、閲覧・コメントありがとうございます。 (2018年1月14日 1時) (レス) id: d55711392b (このIDを非表示/違反報告)
La mer(プロフ) - 夢さん、お久し振りです(*´ω`*) 久々に読ませて頂きました。今後の展開が予想できなくて気になっています……謎の言葉やそれを言った人物の正体も気になるし…… 張り詰めた毎日の良い息抜きになります、ありがとうございます(^^) 良いお年をお迎えください◎ (2017年12月23日 21時) (レス) id: 7b9f054eff (このIDを非表示/違反報告)
花宮 夢@帰国したけど低浮上(プロフ) - MIYA@冬氷雪さん» 遅くなってしまい申し訳ありません。画像はふわりさんの辞典にURLのやり方が載っていました。雑誌の件ですが、今更でよろしければこちらとしては大歓迎です。もちろんタイミングもあるので、できなくても大丈夫ですよ。 (2017年12月23日 18時) (レス) id: 75dac65544 (このIDを非表示/違反報告)
MIYA@冬氷雪 - 花宮 夢@帰国したけど低浮上さん» 今度、レディデイという雑誌で花宮夢さんの特集を作らせてください。お返事待ってます。 (2017年11月25日 13時) (レス) id: f60eebe690 (このIDを非表示/違反報告)
MIYA@冬氷雪 - 花宮 夢@帰国したけど低浮上さん» お久しぶりに帰ってきてくれたんですね?本当にありがとうございます。(意味不!)新しく、CSSを研究中です。良ければ、どんな風に画像のCSSを投稿できるのか教えて欲しいです。どんなにゆっくりでも、いいので完結まで頑張ってください。 (2017年11月25日 13時) (レス) id: f60eebe690 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:桜庭 美羽 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/SakurabaMiu/  
作成日時:2017年6月18日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。