現実に文脈などない＿2 ページ5
しかもそれは「プロットを立てるなんてかっこ悪い！」と何故か思い込んでいた、駆け出しのあの頃──読めたもんじゃないものばかり書いていたあの頃！ 読まれる為の努力もせず、承認欲求だけはバカみたいに強く、サイトに投稿してはアクセス数にゼロが続くのに耐えられず消去、を繰り返していたあの頃！
そして、それを何故ここで初めて話したような鈴原さんが知っている？
いや、でも彼女はその後に。「──の、鈴原美織ですよ」と。
「ああ、思い出して下さったんですね。私、その鈴原美織なんです。信じられないとは思いますが。私は、紛れもなくあなたの想像から生まれた存在です。何だか、物語みたいですよね」
私の混乱が解けないうちに、彼女はそう言いながら、一度カッターナイフをスカートのポケットへ放り込んだ。そして、今度はシャツの胸ポケットに手を入れ、栞のようなものを取り出した。そして、何故か彼女は、そのてっぺんに巻かれている蛍光黄色のリボンを解く。
一瞬、彼女の姿がぼやけたかと思うとーー次にはっきりと見えた姿は、先程の合服に紺スカートという我が校の制服から、赤セーターに膝丈の上品なグレーのチェックスカートの制服に変わった。芋臭い我が校の制服とは違う、ドラマの中に出てくるような制服。
そこでようやく気づいた。私は彼女を知っている。
──いいや、変な話だが、彼女を生み出したのは私だ。擬態している真面目ちゃんと、見た目だけヤンキーの恋って面白そうだなって、軽い気持ちで書き始めた。
今まで幾度となく、自分の書いた小説のキャラが現実に来ちゃったら、という痛い妄想はしてことがある。
どうやら、今はそれらしい。信じたくもないけれど。そう考えてしまうほど、今の彼女の姿は、かつて私が何度も妄想した姿と寸分違わず同じだったのだ。
しかしどうして彼女にした？ 最近完結した彼女でなければ、私の黒歴史を象徴した彼でもない。──あけすけに言えば、今まで忘れていたほど思い入れのない彼女が？
現実味の欠片もない話しではあるが、考えというものは一度広がりだしたら止まらない。連想ゲームのように繋がっていくのだ。
だって、スズハラミオリ、そう、鈴原美織は。
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